働き方改革で“消えた”残業代はどこへ? 真にやるべきことは「効率化」「コスト圧縮」ではない:利益成長する「生産性向上」のためにやるべきこと(2/4 ページ)
続々と進む「働き方改革」。2019年4月の関連法施行もあり、現場では効率化が進み残業時間も削減傾向にある。一方で、浮いた残業代はいったいどこへいっているのか。また、経営陣は人件費をどのように配分すればよいのか。企業アナリストの大関暁夫氏が解説する。
消えた残業代はどこへ
残業時間が大きく削減されている中で、新たな問題も浮かんできています。それは、圧縮されたコスト(=人件費)はどこにいくのが正しいのかという問題です。これに対してはいくつかの考え方があります。
1つは、単純に「企業の利益増加要因」として内部留保に蓄えるべきだ、という考え方です。しかし、この考え方では従業員が納得しないかもしれません。なぜなら、日本企業では長年にわたり残業が慢性化したことで、残業手当が生活給の一部を形成しているという認識が醸成されているからです。そのため、「残業手当を会社に奪われた」という不平不満が従業員から出て、モチベーションが低下することも大いに考えられるわけです。
そこで、もう1つのアプローチとして削減した残業コストの一部を社員に還元することでモチベーション低下に配慮する企業も出ています。
東証1部上場のシステム系企業SCSK(東京都江東区)では、20時間分の残業手当を固定給として支給するようにしました。さらに、残業時間削減の目標を達成した部署には特別ボーナスの支給も行い、社員のモチベーション低下の防止策を実施しました。
また、三菱地所グループでビル管理部門を担当する三菱地所プロパティマネジメント(東京都千代田区)では、残業時間の削減で浮いた人件費の全額を16年度は一律賞与として還元。さらに17年度は、残業時間の削減目標を達成した部門限定での報奨金還元策に転換しました。あに図らんや、これをいきなり全部門が達成したことで「残業時間削減意識の社内浸透完了」として、18年度からは全社員に一律で残業手当20時間相当分の固定給与支給を実現しています。
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