1年で230万人集客 順路なし、あえて“さまよう”美術館に外国人観光客の行列ができる理由:160カ国以上から来訪(2/4 ページ)
東京・お台場で2018年6月にオープンした美術館が、1年で約230万人が訪れる人気施設となっている。特に、外国人観光客が全体の5割を占めることが大きな特徴だ。同館を目的として東京を訪れる外国人が多いのはなぜか。施設の狙いと特徴を森ビルに聞いた。
「分からない」「迷う」「不便」が大きな価値
展示にはどのような特徴があるのか。まず、館内には、順路表示や全体図を示すマップがない。入場すると、いきなり複数の通路が現れ、どこに行くか選択を迫られる。
何も分からないまま進んでいくと、いつの間にか暗い部屋の中に入っている。そこで立っていると、足元の床に次々と花が咲き、壁には蝶が現れる。プロジェクターで映し出された映像だ。多数のセンサーとコンピュータによって、人の存在を感知し、映像をリアルタイムで作り続けている。映像は次々と出てきて、体を包み込んでいくような感覚になる。
情報を与えないまま展示を見せることには狙いがある。「何でもすぐに調べられて便利な世の中で、『どんな場所か分からない』『迷う』『不便・不安』という体験は一つの価値になる」(杉山氏)。デジタル機器によって頭の中だけで疑似体験や問題解決をすることが多くなった今、あえて体を使って能動的に探索する体験を提供している。
しかし、そのコンセプトはすんなりと受け入れられたわけではなかった。オープン直前、関係者約1000人を招待してテストプレーを実施したところ、「すごく不評でショックだった」(杉山氏)。いきなり暗闇に放り出されることによって、「分かりづらい」「不親切」という印象を与えていた。
そこで急きょ、エントランスに手を加えた。入場待ちの列から見える場所に、コンセプトである「さまよい、探索し、発見する」という文言を掲載。入る前に施設の特性を知り、「マインドセット」してもらえるように工夫した。また、オープン後しばらくしてからは、エントランスにデジタルサイネージを設置。施設の概要を解説する映像を流している。
オープン後はすぐに軌道に乗った。料金は大人1人3200円と決して安くはないが、3カ月間は前売りチケットが毎日完売となった。チームラボの知名度が高いことに加えて、同館が提供する“新しい体験”に多くの人が引き付けられているという。また、同館を「知人からの紹介で知った」という人が多く、実際に体験した人の言葉も決め手の一つになっている。
外国人観光客にとっては「チケットの買いやすさ」も大きな要素だ。独自システムによって、公式サイト内でチケット購入ができる仕組みになっている。当日はスマートフォンで表示したチケットを見せるだけ。旅行客にとって「出発前に確約できる」メリットは大きい。
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