ジャッキー・チェンがビジネス界の「疫病神」といわれてしまう理由:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
ジャッキー・チェンの言動を巡る批判が止まらない。香港デモに関する「中国寄り」のコメントも炎上した。そんな中、「ジャッキーをプロモーションに起用した企業は業績が悪化する」という都市伝説まで話題に。アンチの多さを物語っている。
「中国は世界中で尊敬されている」香港デモへの発言で炎上
ここのところ、どんな批判が出ているのか。ジャッキーの故郷である香港では、2019年3月から反政府の大規模デモが続いている。少し整理すると、きっかけは香港政府が「逃亡犯条例」の改正案を立法会(議会)に提出したことだった。
香港で捕まった人が中国本土に送られるというのは、香港が1997年に返還されてから認められていた「高度な自治」に反するとして抗議が起きたのである。結局、香港政府はこの改正案を撤回したが、それでも火のついた反政府デモ隊は、さらなる要求をしながらデモを続けている。
香港で起きている大規模デモには、いろいろな著名人がコメントをして物議を醸している。そこにジャッキーも「参戦」してしまっている。中国の国営系テレビ局CGTNのインタビューに応じたジャッキーは、案の定、デモ隊の火に油を注ぐようなコメントをした。
「最近、香港での出来事は人々を悲しませ、落胆させている……僕はいろんな国を訪問するけど、私たちの国は近年、急速に発展しており、どこに行っても中国人であることを誇りに感じている。5つ星の赤い旗(五星紅旗)は世界中で尊敬されている」
さらに「香港は僕の生まれた場所で故郷、中国は私の国だ。僕は僕の国と故郷を愛している……心から香港に平和がすぐに訪れてほしい」とも述べている。
この発言に対し、香港からはTwitterなどで辛辣(しんらつ)なコメントが噴出した。「香港はあなたのことが大っ嫌いだ」「私たちが香港出身だというとジャッキー・チェンについて聞かれるが、それはもうやめてくれ」
中国の世界的な台頭に疑いはない。力をつけて大国の地位を固めつつある。しかし一方で、国内の人権問題が欧米諸国から非難されている。また米国を中心とする欧米諸国は中国について、自分たちの価値観をつぶしかねないと脅威に感じている側面もある。
そう考えると、中国が世界中で尊敬されているというのはちょっと言い過ぎな気もするが、中国国営系のテレビならば、そう答えるしかないのかもしれない。いずれにせよ、インターネットで言動をチェックできる時代になっているので、著名人らもこうしたコメントをする際には非常に苦しい選択を強いられる。特に映画業界に身を置いていれば、中国市場を無視できないのは当然だろう。
ちなみに、ジャッキーはこのインタビューの少し前、台湾を訪問した際に「香港のデモをどう思うか」と聞かれて「何も知らない」と言葉を濁したと批判的に報じられている。また、台湾の有名歌手、周杰倫(ジェイ・チョウ)はジャッキーと一緒の写真をSNSでアップして、ネット上でたたかれるはめになった。
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