連載
同一労働同一賃金が開く“パンドラの箱”――派遣業界に突き付けられる退職金問題:人事ジャーナリスト・溝上憲文の「経営者に告ぐ」(5/5 ページ)
ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する。今回は4月施行の「改正派遣労働者法」について。じつはこの法律は派遣会社の存続を左右しかねない重大な内容を含んでいて、派遣社員を受け入れる派遣先企業にも大きな影響を与える可能性がある――。
悪質な場合は企業名公表
派遣先企業が単に派遣料金が安いからという理由で違法派遣を受け入れると、無傷では済まない。許可を受けていない派遣会社から派遣社員を受け入れると法律違反に問われ、悪質な場合は企業名公表などによって社会的信用を失墜させることになる。
また、違法派遣を受けた時点で、派遣社員を直接雇用にしなければならない「労働契約申込みみなし制度」が適用される(派遣先が違法派遣であることを知らなかったなど過失があれば適用されない)。
派遣先均等・均衡方式を採る場合には、派遣先が自社の比較対象社員の情報を提供しないときや、また、虚偽の情報を提供したときなども勧告や企業名公表の対象になる。
施行まで残された時間は少ない。もし手続きが間に合わなければ、派遣社員の生活を含めて大きく混乱する可能性がある。
関連記事
- 同一労働・同一賃金の衝撃 大企業は本当に「非正規社員を救う」のか
ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する。今回は施行までいよいよ半年を切った「パートタイム・有期雇用労働法」について。同法は、同一労働同一賃金の規定を盛り込んでいるが、正社員と非正社員の待遇差を解消しようとすれば、これまで低い賃金で使ってきた非正社員の賃金を上げざるを得ない。ということは、経営者は空前の「コスト増」に苦しむことになるが……。 - 非正規社員もボーナスがもらえる? 賞与と各種手当を取り戻す「正当な手順」
6月に入り夏のボーナスシーズンが到来。非正規社員にとってボーナスは縁遠い存在だったが、その常識を覆す判決が大阪高裁で下された。賞与や各種手当を取り戻す正当な方法と手順とは? - 悪質手口から有休を守れ! あなたにもできる「ブラック企業との戦い方」
働き方改革関連法で注目されるのが年5日の「有給休暇の取得義務」――。取得させないように動く経営者からいかにして自分を守るのか? - 「同一労働同一賃金」とは? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は取り上げるのは「同一労働同一賃金」。 - 「非正規社員の待遇改善」の手順は? 人事担当者必見の「働き方改革」用語解説
働き方改革関連法が可決・成立し、企業にも具体的な対応が求められます。企業の人事担当者が押さえておくべき「働き方改革」のキーワードをピックアップ。労働問題を扱う新進気鋭の弁護士が、用語の概念と企業が取るべき具体的な対策方法を解説します。今回は「非正規社員の待遇改善」と、その具体的な手順を取り上げます。 - それでも日本企業が「内部留保」をため込む理由――「保身」に走る経営者たち
気鋭の「硬派経済ジャーナリスト」が、日本企業が生産性を向上させ、生き残るために必要な施策を提言する。2018年、内部留保の額は過去最大を更新し続け463兆円に達した。その裏には、再投資せずに「保身」続ける経営者の姿がある――。 - “高齢者版追い出し部屋”だけじゃない 70歳雇用義務化がもたらす「どの世代にも残酷な未来」
ベテラン人事ジャーナリストの溝上憲文が、人事に関する「経営者が対応すべき施策」を提言する新連載。今回は刻々と進む70歳雇用義務化について。この施策の先には、「現役世代の給与に手をつけなければならない」という厳しい現実が……。 - 日本人の賃金が増えない根本理由 「内部留保優先の経営」から脱却せよ
硬派経済ジャーナリスト磯山友幸が斬る新連載「滅びる企業 生き残る企業」。今回は一向に増えない日本人の給与について――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.