ブラック企業大賞を2年連続で受賞した三菱電機 過労死を繰り返す「隠蔽」の構図を探る:なぜ、痛ましい事件が相次ぐのか(2/5 ページ)
19年夏に三菱電機で発生した社員の自殺。激しいパワハラが問題視されたが、同社のこうした事件はこれが初めてではなかった。なぜ、痛ましい事件が相次いでしまうのか。背景には、遺族の訴訟や申請を「コスト」と見なし、事実を隠蔽する姿勢が透けて見える。労働問題に詳しい今野晴貴氏が解説する。
4年間で5人が労災認定された三菱電機
19年8月に自死した20代の男性新入社員は、兵庫県尼崎市にある三菱電機の生産技術センターで働いていたが、指導担当の30代男性上司から日常的に暴言を受けていたという。亡くなった男性が残したメモには、質問しても上司がきちんと対応してくれず、他の社員の前で激しく非難され、「次、同じ質問して答えられんかったら殺すからな」などと言われたことが記録されている。
こういったパワハラ行為を苦に、男性は社内の発表会の前に、社員寮近くの公園で自死している。また、「死ね」「殺す」と言った30代男性上司は自殺教唆の疑いで書類送検されている。このような人間が職場の「上司」なのだから、いつ精神疾患や過労自死が起こってもおかしくないような異常な労働環境が放置されていたといえるだろう。
ただし、今回の事件では、この加害上司の個人的な資質にとどまらず、同社の社内体質が厳しく問われなければならない。というのも、同社では過労自死事件がこれまでにも繰り返されてきたからだ。
三菱電機では、14年〜17年の4年間で、長時間労働などが原因となり技術職や研究職に就く5人が労災認定を受け、うち2人が自死していることが分かっている。また、16年には別の新入社員が、19年に自死した20代男性と同じ寮で自死していたことも明らかになっている。
さらに、神奈川県の三菱電機情報技術総合研究所でも、2013年に入社した30代の男性が上司のパワハラや1カ月に100時間を超える残業などの長時間労働が原因で精神疾患を発症し、藤沢労働基準監督署から労災認定を受けている。この男性が働いていた職場では、労働時間は自己申告制で、上司からは一定の上限内に抑えるよう虚偽申告を指示されていたという。
このように三菱電機では、確認できるだけでも長時間労働やパワハラのケースが複数あり、さらに労働時間の虚偽申告を促すなど、過労の事実を覆い隠そうとしていたことが分かる。この「隠蔽体質」こそが、問題の改善、防止を遠ざけ、過労死を繰り返す原因であろう。その結果、三菱電機は18年から2年連続で「ブラック企業大賞」を受賞するに至っている。
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