賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/5 ページ)
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。
例えば、同一労働同一賃金の議論が始まった当初、安倍晋三首相は以下のように発言していました(16年1月22日の通常国会での施政方針演説の一部)。
「私たちは『一億総活躍』への挑戦を始めます。最も重要な課題は、一人一人の事情に応じた、多様な働き方が可能な社会への変革。そして、ワーク・ライフ・バランスの確保であります。
(中略)非正規雇用の皆さんの均衡待遇の確保に取り組みます。短時間労働者への被用者保険の適用を拡大します。正社員化や処遇改善を進める事業者へのキャリアアップ助成金を拡充します。契約社員でも、原則1年以上働いていれば、育児休業や介護休業を取得できるようにします。さらに、本年取りまとめる『ニッポン一億総活躍プラン』では、同一労働同一賃金の実現に踏み込む考えであります」
「均衡待遇の確保」と明確に述べています。
さらに、その後に放送されたNHK「日曜討論」で、これが非正規ではなく、正社員、特に「ミドルの正社員=会社の中で重い責任を担っている人」を脅かす問題であることが明らかになります。共産党の小池晃政策委員長に、「同一労働同一賃金の中身」を問われた自民党の小野寺五典政調会長代理が次のようにコメントしたのです。
「会社の中で、常勤には責任の重さがあるのでバランスをとって不均衡にならないように方針を決めていく」
もっとも、ジョブ型でない日本独特の働き方では、年齢や経験など職務給が存在しているため、同一労働同一賃金を実行するのは容易なことではないのも事実です。しかしながら、「均衡」を重要視し続ければ、その職務給を都合よく廃止できる。実際、その動きはじわじわと進められています。
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