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賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/5 ページ)
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。
ミドル・シニア社員のリストラが加速する
このような状況を鑑みると……
- 非正規の賃金が上がるのではなく、正社員の賃金が非正規並みになる可能性
- 40代以上の賃金が下がる可能性
が極めて高い。
それだけではありません。政府は定年を70歳に義務化する方針を示しているので、ミドル&シニアの正社員のリストラが加速することになるかもしれません。
19年1〜11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破し、今年は味の素(100人程度)やファミリーマート(800人程度)など7社、計1500人が、バブル世代をターゲットに希望・早期退職を実施する方針を決定したと報じられています。
これまでは「景気が悪くなる→希望退職者を増やす」が定説でしたが、業績の良い企業でも将来を見込んで続々と「お引き取りください!」攻勢に出ているのです。
19年12月に朝日新聞が45歳以上の大量リストラを発表し、退職金は上限6000万円という驚愕(きょうがく)の数字が報じられ話題になりましたが、6000万円払ってでもコスパの悪いシニア社員をたたき出したいのです。
65歳定年が義務化され、企業は60歳で定年した社員を雇用延長という形に切り替え、低賃金で雇用してきました。しかし、それを不服とした裁判が増えているので、同一労働同一賃金制度が施行されれば、「裁判に持ち込まれるリスクを減らそう」と考える企業が増えても不思議ではありません。
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