小泉大臣も注目すべき「男性の育休」の意外な効果 ダヴが広げる“支援の輪”とは:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
小泉進次郎環境大臣が育児休暇を取得すると表明し、話題になっている。実は、米国においても男性は育休を取得しにくい状況だ。それを変えようと「ダヴ」と著名起業家が啓発活動を行っている。育休制度の充実は、夫婦だけでなく子ども、企業にも良い効果がある。
育休を取りにくい米国で、父親たちに5000ドル支援
この活動を始めたのは、テニス選手であるセレナ・ウィリアムズの夫で、米掲示板サイトReddit(レディット)の創業者であるアレクシス・オハニアンだ。オハニアンは、2019年2月にダヴとこのプロジェクトを立ち上げた理由を「自分が育休を取ることで社員や社会にとっても前例になるようにしたかったからだ」と語っている。小泉大臣も育休を取る理由を同じように挙げている。
報道などを見ていると、資格があっても多くの男性が育休を取らない日本と同様に、米国でも出世争いに置いていかれたり、職場で目に見えないプレッシャーを感じたりして、育児休暇を取りにくいことが多いという。ある調査では、どうしても育休を取らなければならない状況に追い込まれたら、3分の2が仕事を辞めると答えている。一方で、育休を父親も取るべきと答えている米国人は70%近い。
そんな状況を受けて、オハニアンはダヴの男性向け製品ブランド「メン+ケア(Men+Care)」と共同でキャンペーンを立ち上げた。このキャンペーンでは、「育児休暇基金」を作り、有給の育休が利用できない父親たちを金銭的にサポートする。さらに基金に申し込むには育休を取る旨の誓約書に署名する必要がある。最終的には100万ドルの基金を集めて、父親たちを支えることを目指していたが、すでにその額は達成している。現在、有給の育休を取れない父親1人につき、5000ドルが基金から支払われており、21年までの2年間にわたってキャンペーンは実施される。
キャンペーンのサイトでは、どのように会社に育休を求めるかなどアドバイスも掲載。また実際に育休を取った父親たちの証言を集めたドキュメンタリーまで提供する本気度である。
そしてそうした活動をベースに、現在、連邦議会で有給の育児休暇取得を義務化する法律を作ろうと議会議員らに働きかけを行っている。そして19年12月、米議会はまず連邦職員に対して、有給の育児休暇を認める合意に達しており、少しずつ法制化に向かっている。
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