少なすぎる残業に要注意! 組織を崩壊させる「粉飾残業」のあきれた言い訳と手口:たかが残業、されど残業(3/5 ページ)
2019年4月に施行された働き方改革関連法案で、大企業を対象に残業規制の強化がなされた(中小企業は20年4月施行)。すると、今までは多すぎた残業が、今度は少なすぎるという問題が起きているという。残業規制をかいくぐる悪質な「粉飾残業」とは?
「粉飾残業上級者」の手口とは
ノートPCやタブレットなど、モビリティにすぐれた端末がこれだけ普及すると、オフィスという「箱」を基準にして、労働か労働でないかを判別することは難しい。オフィスの外で(例えば家やカフェに持ち帰って)仕事をする人が、非常に増えているからだ。
だからこの会社でもPCを起動している時間を目安にしたわけだが、「粉飾残業」の上級者はPCを使わずに仕事をする。
例えば、ノートだ。PCを使うとログが残ってしまうので、あえてアナログな「粉飾残業専用ノート」をつくり、作成しようとしていた資料のアイデア、お客さまの要件、返信するメールの文面などを事前に書いておくのである。
そのノートを使い、部下と時間外や休日にカフェで落ち合ってミーティングをするケースもある。こうすれば時間外労働や休日出勤の記録が残らない。「うちの主人が週末に、よく部下の方々を呼び出してミーティングしています」という、ご家族からの何気ない一言で粉飾残業が発覚したケースも過去にあった。
粉飾残業は粉飾決算と異なり、当事者の罪の意識が低い。それどころか、会社のために一所懸命に仕事をやっているのだから何が悪い、という開き直る社員さえいる。だからこそ、根が深い問題ともいえるだろう。
粉飾残業は組織を崩壊させる
所定時間内に終わらないのであれば、残業せざるを得ないときもあるはずだ。問題なのは、虚偽の報告をすることである。正直に報告すると都合が悪いので、問題がないように報告データを粉飾するという行為がダメなのだ。
教科書的に言うと、「問題」とは、「あるべき姿と現状とのギャップ」を指す。従って、現場が正しくデータを入力しないと、正確に現状とのギャップを経営者がつかむことができず、組織の問題を正しく把握できなくなる。だから、現状データの改ざんは罪深いのである。
では、どうすればいいのか。地道に啓蒙活動を繰り返し、社員に意識を変えてもらうしかない。だから、この会社の社長が「こうなったら、PCを強制シャットダウンさせましょう。それに警備会社と契約して、時間が来たらオフィスを施錠します」と言ってきたときも、私は「いったん落ち着きましょう」と返した。
確かに、ある一定の時刻になったら、PCを強制シャットダウンする会社もある。残業削減のために警備会社と契約する会社もある。ICタグを社員証につけ、出退勤管理して残業削減に成功した例もある。
残業抑制システムを販売する会社から、事業提携を呼びかけられたこともある。しかし、私は前向きになれなかった。なぜなら、あまりにも仕組みに頼ると、管理ではなく「監視」になってしまうからだ。これだけは、やめてほしい。ガチガチに仕組みで組織を統制しようとすると、自立型人財が育たないという大きな副作用が出る。
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