マーケティングは「無意識」を探る時代に ニューロサイエンスで検証した新商品の効果は?:ダイドードリンコの事例(2/3 ページ)
アンケートやインタビューでは分からない「無意識」を脳波測定などによって可視化し、マーケティングに生かす動きが活発化している。ダイドードリンコはニールセン・カンパニーと共に、新開発の容器の効果を測定した。消費者の感情や記憶に訴える効果はあったのか。
新ボトルに対する「感情」「記憶」を数値化
ニールセンが用いている調査指標は「注目」「感情関与」「記憶」の3つ。脳波測定や視線計測などによって3つの指標を数値化し、それを合わせることで「総合効果」を出す。
では、なぜ3つ必要なのか。ニールセン・シンガポールの脳科学者、辻本悟史氏は「まず見てもらわないといけないため、注目は重要。だが、それだけでは不十分。どんな感情を持ったか、そして、いかに自分と関連付けて長期記憶にとどめてもらうかを調査することで、総合的な効果が分かる」と解説する。
ダイドーの場合は、脳波測定による「感情関与」「記憶」の指標が分析対象。つまり、ボトルに対して「感情がどれほど揺れ動いているか」、また「それをどれほど記憶しようとしているか」を脳の動きから計測する。
実験では、ボトルを「触らずに見る」「右手で触る」「持ち上げて触る」という3段階において数値を計測。2つ目の「右手で触る」段階では、感情関与、記憶ともに従来のボトルの方が数値の上昇が見られたが、3つ目の「持ち上げて触る」段階では、新ボトルの数値の方が高かった。片手で持つ段階では親しみのある従来ボトルに反応したが、両手で触ると、凹凸がある独特の形状の新ボトルに心地よさを感じる、ということのようだ。
この結果で重要なのは、触り続けている間にスコアが上がったことだという。伊藤氏は「持ち続けることで心地よさを実感してもらえれば、リピートにつながる」と話す。実際に、19年3月に新ボトルの商品を発売したところ、販売量はリニューアル前の1.5倍に伸びた。ボトルの形状だけが成功の要因とは限らないが、心地よさを感じるボトルであることは明確になっている。
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