かつてないロボット「LOVOT」が世に送り出されるまでの舞台裏 (4/6 ページ)
ほんのり暖かくて、人懐っこくて、個性的で、かわいくて――家族型ロボット「LOVOT」(らぼっと)開発の裏側に迫る。
前例のない製品に協力してくれるベンダー探しの難しさ
司会 LOVOTのようなユニークな製品を下支えするシステムが、「SaaSの組み合わせでできている」というのも興味深いところです。どのような経緯からそうなったのでしょうか。
杉田 SaaSベンダーは売って終わりではなく、システムを導入した後に共に成長していってそこから収益を得るモデルですよね。彼らの視点からすると、ぼくらに成長してもらわなければ困るわけで、成長してもらうためには自分たちもがんばって技術やサービスを提供してワークしなければ困る。そのあたりの思惑が合致したのが大きな理由です。
福田 コスト見合いも含めて考えると、SaaSのほうが合理的なプライスレンジに至ったり、早期の立ち上げやスモールスタートをしやすいという現実的な観点もありました。
司会 実物がない中で、開発パートナーやソリューションを選ぶのにも苦労したのではないでしょうか。
梅澤 ベンダー、パートナー選定はとても苦労しました。60数社とお会いしましたが、何しろ、まだ見ぬものを作るという話なので、理解してもらうのがとても難しかったです。
司会 どのような働きかけをしたのですか。
梅澤 RFP(提案依頼書)の冒頭に、GXのCEO、林要さんの半生を持ってきて、経歴やどんなことを成し遂げたいのか、LOVOTが世の中に提供する価値は何なのか――というところを、丁寧に説明しました。
杉田: 僕がベンダーに説明したのは、「存在感が価値になるロボット」だということです。今はLOVOTそのものがあるから説明しやすいですが、当時は具体的なモノがなかったので、とにかく理解してもらうのが難しかった。
「投資する価値がある」と言ってくれる会社と、「こんなのよく分からないな、具体性も見えないし、役に立たないロボットなんて作ってどうするんだ」と言う会社と、見事に二極化しましたね。
まだモノがない中で話をしているときには、「人に愛を告白しているような気持ち」にもなりました。「将来に向けて、こんなすてきなことを考えているから、ちょっと僕のことを好きになってよ」というような(笑)。そんな気持ちで60数社回って、振られることもあれば、ちょっとキープでいいかなと言ってもらえることがあったり、真剣にお付き合いしましょうといってもらえたりしました。
梅澤 面白かったのは、大手のSI企業の方々より、SaaSベンダーやSaaSサービスを中心に提供しているSI企業の方々の方が興味を持ってくださったところです。彼らが扱っているSaaSというサービスの性質上、「一緒にビジネスを作っていくという思想」が強いので、われわれの提案に対して前向きでしたね。
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