かつてないロボット「LOVOT」が世に送り出されるまでの舞台裏 (6/6 ページ)
ほんのり暖かくて、人懐っこくて、個性的で、かわいくて――家族型ロボット「LOVOT」(らぼっと)開発の裏側に迫る。
変化の中でブレずにチームをまとめていくために
司会 変化が多いプロジェクトだと、開発パートナーとの関係を維持するのも大変だったのではないでしょうか。
杉田 今回のプロジェクトは、開発パートナーの数がかなり多かったので、キーマンと密にコミュニケーションするよう心掛けました。各社のキーマンとは、週に1回くらいの頻度で、プロジェクトの課題や彼らの本音をヒアリングする機会を作っていました。
なぜ、密なコミュニケーションが必要だったのかというと、パートナーとの契約が請負(頼まれた仕事を完成させる契約)ではなく、準委任(仕事や作業に対して報酬が発生する契約)だったこともあります。
システム開発では、失敗が許されないプロジェクトになればなるほど、パートナーの数を絞ったり、請負契約にしたりと、ユーザー側が安全を担保できる形で開発に臨むことが多いのです。しかし、今回はあえてそうせず、準委任契約で進めました。
なぜそれが機能しているかというと、SaaSというビジネスモデルを選んだことが根底にあると思っています。SaaSビジネスを手掛けている人たちにとっては、LOVOTが世の中に出ていくための仕組みを開発し、本サービスがスタートしてからが、彼らのスタートになるわけです。
同じ船に乗り、どうやってビジネスを拡大させていくのか。システムやサービスを、どうやってきちんと動かしていくか――。そういった利害関係が合致しているのが、このプロジェクトの特徴なのです。
今回、パートナーの方々には、準委任契約で仕事をお願いしたわけですが、密にコミュニケーションをとっていることもあって、莫大な請求がきたり、過失があってプロジェクトがダメージを被ったりするようなこともなくプロジェクトを進められています。
昔は私も、請負契約できっちり仕上げてもらうような形でプロジェクトを進めることが多かったのですが、今回、準委任契約で進めてみたところ、得られるものは多く、きちんと結果を出せることが分かりました。
前例のない製品のためのシステム作りで重要なことは
司会 かつてない製品のための仕組みを作るためには、何が重要だと思いますか。
福田 「判断は、できるだけ最新の状況でするのがいい」ということですね。例えば、半年前に決めたところに向かって、ひたすら開発を進めていたら、その後に状況が変わった場合に全く対応できないですよね。
常に「一番いい判断ができるタイミング」まで、いろいろなことを考え続け、試行錯誤し、仮説を検証しながらプロジェクトを進めることが、前例がない製品やサービスを生み出すときに適した手法なのだと思います。
梅澤 実は、このプロジェクトに関わってから、かなり価値観が変わったんです。最初はGXのみなさんから「ここを変えたい」と相談されると、正直なところ「いやだな」と思っていたんですね。せっかく構築した仕組みを変更しなければならないし、それに伴う手戻りもあって苦労することが分かっているから、どうしてもそう思ってしまう。
でも、プロジェクトの途中くらいから考えが変わったんです。「どうやってビジネスを成功させるか」が大事なのであって、仕組みや仕様書が整っていることは二の次だと。GXのみなさんが言ってくるのは、「LOVOTをより良くするためのこと」なのだから、受け入れなければならないと、自然に思えるようになったんです。
変化を怖がったり嫌がったりせずに受け入れるようになると、「じゃ、それを具体的に実現するためにはどうしようか」と、前向きに考えるようになり、それに取り組むためのサイクルも早く回せるようになりました。
前例のない製品や、変化し続ける製品のための仕組みを作る場合には、今回のようなシステムの組み方や、関係者とのコミュニケーションの仕方は参考になるのではないかと思います。
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