「ストーカーアプリ」の危険な現実 メール盗み見、会議盗聴を疑うべき“異常”とは:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
行動などを監視するアプリ「ストーカーウェア」について、米国人の1割が使った経験があることが分かった。他のアプリと同じように入手できるものも多く、相手に気付かれずにインストールできてしまう。スマホに“異常”を感じたら、被害に遭っている可能性がある。
もちろんアプリストアでプラットフォームを提供している側もこうした問題は把握しており、悪質なアプリは排除する方向で動いている。しかしアプリストアなどから追い出されても、あらためて名前などを変えて登場し、いたちごっこ状態になっている。
とはいえ、「ストーカーウェアってそんなに出回っているのだろうか?」と疑問に思う人もいるかもしれない。海外のセキュリティ会社などの調査では、2019年には世界で3万7532個もストーカーウェアが確認されている。その数は、18年の2万7798個から35%も増加している。つまり、それだけ需要があるということだ。事実、19年半ばに行われた調査では、当時、Androidのマーケット(Google Play)には、明らかにストーカーウェアだと分かる7個のアプリが確認され、計13万回もダウンロードされている。
現在も、子供の居場所を突き止めるGPSアプリや、自分の携帯をなくしたときに探すことができるアプリなどを数多くダウンロードできる。怪しく見えるアプリも少なくない。
もう一つ問題なのは、セキュリティソフトを導入しても、アンチウイルスソフトなどがこうしたストーカーウェアを検知できないことが少なくないということだ。つまり、誰かに勝手にインストールされてしまったら、なかなか気が付かないケースが多いと考えられる。
それが米国では、10人に1人がパートナー相手に不適切に使っているというのである。日本ではまったく話題にならないが、おそらく日本にもそうした悪意のある使い方をしている人はいるだろう。
そして、これは単なるセキュリティの問題だけではないという議論にもなっている。ストーカーウェアの被害は、単にプライバシーを奪う不当な行為というだけでなく、家庭内暴力などにもつながっていることが分かっている。欧州ジェンダー平等研究所の調査では、ストーカーウェアの被害に遭っていた人の実に7割がパートナーから肉体的または精神的な暴力を受けていることが明らかになっている。ストーカーウェアは虐待ともつながっているのである。そんなことから、セキュリティ企業や家庭内暴力などの対策を行う組織は手を組んで、「反ストーカーウェア連合」という団体を立ち上げて対策を始めている。
ちなみに、16年に逮捕されたメキシコの麻薬王ホアキン・グスマン(通称、エルチャポ)も、ストーカーウェアを妻と恋人のスマホにインストールして、行動を監視していたことが判明している。
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