コロナ・ショックとリーマン・ショックの違い:KAMIYAMA Reports(2/3 ページ)
バブル崩壊とウイルス感染では景気回復が違うはずだ。株価の下げのめどと今後のシナリオを語ることは不可能への挑戦だが、現時点で市場で想定されている2四半期程度の消費低迷とその後の正常化を前提とすると、3月23日時点の日・米・欧の株価指数はおおむね悪材料を織り込んでいるとみられ、さらなる下げが長く続くとは考えにくい。
トレンドを変えない必要条件は財政出動
このように、経済が突然受けたショックの原因と環境の違いが明確だとすれば、ショックからの反転のきっかけとして、金融政策より財政政策の規模とスピードに注目したい。FRB(米連邦準備制度理事会)や日本銀行の政策は、緊急事態(金融の目詰まり)回避的で、需要の押し上げ(設備投資を増やすなど)効果は小さそうだ。日銀のETFやREITの買い入れ増額も、市場心理の不必要な悪化を防ぐ副次的効果はあるが、経済へのインパクトは限定的となるだろう。
世界経済が米国の雇用拡大、賃金上昇、消費と貿易の拡大にけん引された成長トレンドにあったとすれば、今回のショックがもたらすであろう、市場で想定されている2〜3四半期程度の「景気後退(マイナス成長)」は、技術的・サイクル的なショックに過ぎないはずだ。
今回の経済と金融市場の混乱解消の進展を占うポイントは、日・米・欧の財政政策の規模とタイミングだ。まず、政府が不要不急の外出などを止めたことによる需要の減少で被害を受けた企業などに対して、目先の休業補償などが緊急対応策となるが、これは最低限必要な緊急措置として適切に行われる必要がある。重要なのは、その後も続くであろう消費減退を抑える財政支出だ。
具体的には、「トランプ米政権は17日、新型コロナウイルスによる経済不安を抑えるため、総額1兆ドル(約107兆円)の景気刺激策の検討に入った」とされ、「米国民に小切手を直接送る施策を検討している」(ムニューシン財務長官)、給与税の免除や航空会社、宿泊業、航空機メーカー支援策などが盛り込まれるとの見通しだ。これは「2008年のリーマン・ショック直後の緊急対策を上回る規模」になるとも報道された(3月18日付日本経済新聞)。
日本では消費税率の短期引き下げの可能性も取り沙汰されている。そもそもすべての人にかかる消費税率を下げるより、その分のお金を低所得層に再分配したほうが貯蓄より消費に回りやすく格差是正につながるのだが、時間がかかりそうなので、緊急策としてあってもおかしくない。
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