コロナ・ショックとリーマン・ショックの違い:KAMIYAMA Reports(3/3 ページ)
バブル崩壊とウイルス感染では景気回復が違うはずだ。株価の下げのめどと今後のシナリオを語ることは不可能への挑戦だが、現時点で市場で想定されている2四半期程度の消費低迷とその後の正常化を前提とすると、3月23日時点の日・米・欧の株価指数はおおむね悪材料を織り込んでいるとみられ、さらなる下げが長く続くとは考えにくい。
市場動向は不透明だが、正常化し始めれば回復は早いと予想
株価の下げのめどと今後のシナリオを語ることは不可能への挑戦だが、現時点で市場で想定されている2四半期程度の消費低迷とその後の正常化を前提とすると、3月23日時点の日・米・欧の株価指数はおおむね悪材料を織り込んでいるとみられ、さらなる下げが長く続くとは考えにくい。今回のショックがリーマン・ショックより小さいという想定が変わるとすれば、欧米のウイルス問題の正常化に1年程度はかかるという懸念が強まるときだろう。
2020年4-6月にウイルス収束、7-9月に景気回復し、10-12月に経済が正常化することを前提として考えよう。まず、財政政策の効果が消費や企業売上に波及していけば、金利上昇要因となる。日・米の金融緩和後に長期金利が高止まりしているのは、現金選好(cash is king)とともに財政拡大への期待とも解釈できる。
仮に正常化がこの程度の期間であれば、不必要な金融収縮(例えば、貸しはがし)は想定できず、所得減はあっても一時的もしくは部分的に終わり、消費の回復(いわゆるペントアップ・デマンド)がすぐに見え始めるだろう。完全に元に戻るには時間がかかるだろうが、止まっていた消費や投資の回復は、正常化を早めることになる。
今後一時的に株価の下げがあるときは、(ウイルス収束の遅れがみられる場合を除き)財政政策催促相場となるだろう。米大統領選挙がある年に、(可能性は低いが)与野党が歩み寄れないことなどがあれば、懸念が強まる恐れはある。一方で、無力扱いされがちな金融政策だが、市場を落ち着かせる効果はある。
日本で、仮に年度末に株式やREITの投げ売りがあれば、日銀によるETFやREITの買い入れが、投資家の不安心理を和らげることになり、現金選好に伴う日米長期金利の最低水準からの底打ちも、財政拡大期待に支えられるものと変わるだろう。現段階では、世界経済は成長トレンドに戻っていくと想定している。
筆者:神山直樹(かみやまなおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。
KAMIYAMA View チーフ・ストラテジスト神山直樹が語るマーケットと投資
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