「国民の皆さん、ひとつよろしく!」でいいのか 緊急事態に問われる“リーダーの言葉”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
4月7日に緊急事態宣言が出され、日常が変わりつつある。そんなときに重要なのが「リーダー」の言葉だ。正しい理解に基づく情報発信、受け手への共感性が信頼につながる。日本の政治家も、情報の透明性、共感性を持って発信し、安心感を与えてほしい。
私たちの“リーダー”のメッセージは?
では、信頼を得るためにリーダーに求められることは何か?
第一に、根拠をしっかりと示す客観性と情報の透明性を徹底すること、第二に「受け手=私たち」の感情を正しく推し量る共感性が必要不可欠です。
人間には首尾一貫性を好む傾向があるため、腑に落ちる説明は「信頼感」を高めます。また、自分たちと同じ目線でいてくれるリーダー、気持ちに寄り添ってくれるリーダーは頼りになります。
リーダーの言葉から「私たちの心の声」が聞こえて、初めてそれが心に響くメッセージとなり、「ああ、このリーダーを信じていいんだ」と理性的な行動を選択できるのです。
では、私たちの「リーダー」はどうでしょうか?
情報の透明性は? 共感性は? 「リーダー」のメッセージはあるでしょうか?
あくまでも個人的な意見ですが、日本のリーダーの言葉は全く心に響かない。実に残念なことですが、感染拡大が深刻になってからは、オーバーシュート、ロックダウン、という分かりづらい専門用語ばかりを乱発し、「日本語でいいじゃん!」と批判されると、今度は「感染爆発」「都市封鎖」という刺激的な言葉を繰り返しました。
安倍首相は「まさに」「いわば」「戦後最大の危機」というお得意ワードばかりで、“温度”が感じられませんし、小池都知事に至っては、刺激的な言葉を間違って使っている場面が見受けられ、少々驚きました。
緊急事態宣言の発令が決まった4月6日夜に行われた緊急記者会見もそうでした。知事は、「ソーシャル・ディスタンス」(social distance)という言葉を使っていましたが、正確には「ソーシャル・ディスタンシング」(social distancing)。「ing」があるかないかで、その意味は大きく変わります。
関連記事
- “お上”の指示でやっと広がる時差通勤と、過重労働を招くフレックスタイム――ニッポン社会の限界
新型コロナウイルス感染拡大の不安が高まる中、テレワークや時差通勤を促進する行政機関や企業が増えてきた。通勤ラッシュのストレスを軽減する動きは広がってほしいが、日本人には「フレックスタイム」よりも「時差通勤」が必要ではないか。なぜなら…… - 賃金は減り、リストラが加速…… ミドル社員を脅かす「同一労働同一賃金」の新時代
2020年は「同一労働同一賃金」制度が始まる。一方、厚労省が示した「均衡待遇」という言葉からは、正社員の賃金が下がったり、中高年のリストラが加速したりする可能性も見える。そんな時代の変わり目には、私たち自身も働き方と向き合い続ける必要がある。 - 「もう、諦めるしかない」 中高年化する就職氷河期世代を追い込む“負の連鎖”
40歳前後になった「就職氷河期」世代に対する支援に、国を挙げて取り組むことを安倍首相が表明した。しかし、就職時の不況や非正規雇用の拡大など、さまざまな社会的要因によって追い詰められた人たちの問題は根が深い。実効性のある支援ができるのか。 - 月13万円で生活できるか 賃金を上げられない日本企業が陥る悪循環
米フォードの創業者はかつて賃金を上げて生産性を高めた。現代の日本では、海外と比べて最低賃金は低いまま。普通の生活も困難な最低賃金レベルでの働き手は増えている。従業員が持つ「人の力」を最大限に活用するための賃金の適正化が急務だ。 - 安倍首相の根拠なき“英断”で浮かび上がる「階級社会・日本」の縮図
新型コロナウイルス対策で始まった臨時休校に伴う保護者への補償について、企業の従業員と、フリーランスや自営業者の“格差”が議論になっている。今回の騒動で「階級社会」が表面化。アンダークラスの人たちがさらに苦境に立たされることになるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.