新型コロナと緊急事態宣言があぶり出した、鉄道沿線ビジネスの困難(3/4 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人が移動しなくなった。そうした状況になると、鉄道沿線ビジネスは大変なことになる。グループ全体で、相乗効果を狙っていたのに……。
行楽・寺社参詣輸送も打撃
日光東照宮をめざす東武鉄道や、成田山新勝寺をめざす京成電鉄にもこの状況は大きな打撃を与えている。行楽を兼ねた寺社参詣も減少し、祈る人は自宅で祈ることになる。今年のゴールデンウイークはまるまる「緊急事態宣言」の期間なので、行楽客輸送も減少することになるだろう。
同じような状況は小田急電鉄にもいえる。小田急は、都心への通勤輸送に力を入れるだけではなく、箱根や江の島への行楽輸送にも力を入れてきた。その象徴が「ロマンスカー」だ。もともと、昨年の台風19号で箱根登山鉄道が被災し、地域に打撃を与えていたところに、今回の新型コロナウイルスによる観光客減少により大きな打撃を受けることになった。
小田急グループの中には箱根登山鉄道を有する小田急箱根グループもあり、箱根への観光輸送をになうバスの運行もそこで行っている。また、観光関連ビジネスへの影響も大きい。
行楽などでも、鉄道事業者は鉄道だけではなく関連ビジネスを展開しており、それらが一気に打撃を受けることになる。ふだんは相乗効果でよい方向に向かっていたグループ全体のビジネスが、この状況下ではまとめて悪い方向に向かっている。
西武グループの弱点
そんな中、もっともつらい状況にあるのが西武グループだろう。西武はレジャー関連を強みとし、グループ内でホテルや遊園地を経営し、プロ野球の球団・埼玉西武ライオンズも保有している。しかし、「としまえん」や「西武園ゆうえんち」は休業、プロ野球も開幕の見込みが立たないとなると、その関連輸送自体が消滅することになる。
西武は秩父観光なども含めて行楽ビジネスに力を入れてきたものの、そういったことが一切不可能になる。
西武ホールディングスの株価はここ3カ月で1800円程度から1200円程度に減少し、その他の鉄道事業者に比べても値下がり幅は大きい。なお、成田空港輸送を抱える京成電鉄も、似たような株価の動きを示している。その他の鉄道事業者は、この状況でなんとか株価を戻しているにもかかわらずだ。
関連記事
- 世界一規律正しい日本人が、「外出自粛」の呼びかけを無視するワケ
「不要不急の外出は控えてください」――。政府、自治体、医療関係者などが何度も訴えているのに、なぜ日本人は外出してしまうのか。筆者の窪田氏はマスコミの報道に原因があると見ていて……。 - なぜ「プリウス」はボコボコに叩かれるのか 「暴走老人」のアイコンになる日
またしても、「暴走老人」による犠牲者が出てしまった。二度とこのような悲劇が起きないことを願うばかりだが、筆者の窪田氏は違うことに注目している。「プリウスバッシング」だ。どういう意味かというと……。 - 中央快速線E233系にトイレ設置、なんのために?
JR東日本の中央線快速で、トイレの使用が可能になることをご存じだろうか。「通勤電車にトイレ?」と思われた人もいるかもしれないが、なぜトイレを導入するのか。その背景に迫る。 - コロナ問題で気になる「鉄道の換気」の秘密 今こそ観光列車に乗りたいワケ
鉄道事業者の新型コロナウイルス対策は「通勤電車での感染予防」と「減便」の2つ。通勤電車の換気のための「窓開け」にも歴史がある。一方、通勤電車とは違って、特急列車を運休するのは乗客の減少に対応するためで、集団感染の危険が高いからではない。 - 東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ
お盆休みが終わり、帰省先から首都圏に人々が帰ってきた。満員の通勤通学電車も復活した。国も鉄道会社も混雑対策は手詰まり。そもそも混雑の認定基準が現状に見合っていないから、何をやっても成功できそうにない。その原因の1つが現状認識の誤りだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.