コラム
新型コロナと緊急事態宣言があぶり出した、鉄道沿線ビジネスの困難(4/4 ページ)
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、人が移動しなくなった。そうした状況になると、鉄道沿線ビジネスは大変なことになる。グループ全体で、相乗効果を狙っていたのに……。
在宅勤務時代に対応する東急
一方、意外な関連事業を持ち、在宅勤務の動きに対応できているグループがある。東急グループだ。
在宅勤務の人が増えれば、当然、多くの人が家にいるようになる。するとテレビを見たり、インターネットをやったりということになる。東急グループの「イッツ・コミュニケーションズ」と「ケーブルテレビ品川」では、ケーブルテレビ事業やケーブルテレビ回線を利用したインターネット通信事業を行っており、多くの人が自宅にいなければならない状況に対応している。世界の動きが気になる中、ケーブルテレビで英国のBBCや米国のCNNを放送し、その状況にも対応している。
また在宅の時間が多いと、どうしても電気やガスを多く使用してしまう。「東急パワーサプライ」では、電力やガスの小売を行い、エネルギーを既存の事業者より安く販売している。東急グループは、「外に出る」ことに対応しているだけではなく、「家にいる」ことにも対応しているのだ。
もちろん、東急関連の商業施設では営業の縮小や休業という事態になっており、グループ全体として厳しい状況にあることは確かだ。しかしこういう事態になっても対応できる関連事業を持っていることは、東急らしいと言えるのではないだろうか。
既存の沿線ビジネスは、人が移動しない状況になれば、困難に陥る。そうした中でも、別のベクトルを持つ東急は、興味深い存在である。
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