コロナ・ショックからの回復を支える財政拡大:KAMIYAMA Reports(3/3 ページ)
過去最大級の経済対策を決定した日本では、今後感染拡大防止が奏功した段階で、地域活性化などのアイデアの具体化を含む追加対策が打ち出されることになるだろう。米国では、追加の経済対策が議論され始め、欧州でもEUがルールを一時緩和し、機動的な財政政策が打てるようになった。
機動的な財政政策が打てるようになった欧州
欧州の財政政策は、EU(欧州連合)全体というよりも各国が独自に行い、EUが不健全な負債増加を監督している。しかし、今般のコロナ・ショックにおいては、EUが加盟国の財政赤字をGDP比3%以内に抑えるルールを一時停止し、各国が機動的な財政政策が打てるようにしている。
これまで厳しい財政規律を貫いてきたドイツは、7年ぶりに新規国債を発行するなどして、企業の信用不安を抑えて雇用を維持するために、適切な緊急対応を発表している。
フランスも企業向け支援や雇用を維持する緊急対応を発表しており、スペインではベーシック・インカム(最低所得保障)制度の導入方針を示した。
EUは、新型コロナウイルスの感染拡大の経済的な悪影響に対応し、共に成長する回復プランとして5400億ユーロの経済対策で合意した。ポイントは、救済基金である欧州安定化メカニズムを活用して最大2400億ユーロの与信枠を設けたことだ。これにより、域内企業の救済や雇用維持などへの取り組みが容易になる。感染者数増加が続く欧州各国は、今後感染拡大の収束を見極めてから、景気回復を目的とした追加対策を打ち出すことになるだろう。
筆者:神山直樹(かみやまなおき)
日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジスト。長年、投資戦略やファイナンス理論に関わってきた経験をもとに、投資の参考となるテーマを取り上げます。
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