新型コロナで過酷さ増すトラック業界、「女性ドライバー」が期待ほど増えない理由:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
新型コロナで過酷さが増している業界の一つが物流だ。人手不足と高齢化を解決するために女性トラックドライバーへの期待が高まっているが、国交省が2014年からキャンペーンをやっているのに増えていない。まずは「トラガール」という呼称から見直し、男性本位の文化を変えるべきでは。
時代錯誤のネーミング「トラガール」
とにかく、トラックの運転席から見える物流業界の現実や、その先にある車にまつわる社会問題などにも切り込んでいる。詳細は同著に譲りたいが、筆者が本の中で特に気になったのは「クルマ業界の女性観」という話だった。そこに冒頭の「トラガール」についての考察が登場するのである。
橋本氏に言わせれば、「このプロジェクトには全く賛同できない」という。理由は2つだ。
1つ目の理由は、「トラガール」というネーミングが時代に逆行しているという。「看護師」「キャビンアテンダント」など業界の性差をなくそうとしている時流に反しているからだ。
確かに、日本でも「看護師」「キャビンアテンダント」「保育士」「助産師」という呼び名が使われるようになって久しい。男女雇用機会均等法による、男女は平等に扱われなければならないという考え方からそう変わってきたのだが、トラック・ガールつまり「トラック女」と呼ぶことはまさに一昔前に逆戻りしているといえる。
さらに筆者が付け加えるとすれば、トラックを運転する女性を「ガール」と呼んでいる点にも違和感がある。大人の女性をガールと呼ぶのは感心できないし、おそらく失礼だと感じる人もいるのではないか。海外の英語圏では冗談っぽく大人の女性や年配の女性を親しみを込めて「ガール(ズ)」と呼んだりすることはあるが、バリバリ働く女性を国の行政機関が「ガール」とひとまとめにするのには違和感がある。とにかく、トラガールはポリコレ的にも問題になりそうなネーミングだといえる。
2つ目の理由は、国交省のプロジェクト公式サイトに使われている「ピンク色」だという。女性をピンクのイメージで縛ることは、物流業界の過酷な実態を軽視しているという。そんな生易しい職場ではないということだろう。
関連記事
- “世界で最も心地よい”スニーカーは、日本でも爆売れするか
「世界で最も心地よいシューズ」と評されたスニーカーブランド「オールバーズ」が日本初上陸した。環境への配慮や履き心地を追求したシューズが、なぜここまで評価されているのか。その背景には、明確なビジネス戦略があった。 - 米国の新型コロナ“急拡大”で迫りくる「中国復活」の脅威
世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。日本の経済活動において影響力が大きい米国でも、多くの州で非常事態宣言が出された。米国は今、どのような状況なのか。このまま感染拡大が続けば、先に復活した中国の力が増すことにもつながりかねない。 - オンライン教育「周回遅れ」の日本 “コロナ休校”で広がる、埋められない空白
新型コロナウイルスの影響で休校が続く各国では、オンライン教育の提供が進んでいる。PCやルーターなどを無償提供して環境を整え、通常通りの時間割でオンライン授業を実施している国もある。日本も「教育の空白」を広げないための方向性を示すことが必要だ。 - “テレワーク急増”が弱点に? 新型コロナで勢いづくハッカー集団の危険な手口
新型コロナウイルス感染拡大で世界が混乱する中、それに便乗したサイバー攻撃が激増している。中国やロシアなどのハッカー集団が暗躍し、「弱み」につけ込もうと大量の偽メールをばらまいている。新型コロナに関する情報と見せかけたメールには注意が必要だ。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.