SaaSとAPI連携がバックオフィスを変える理由:本当に効率を上げるためのSaaS(3/5 ページ)
日本企業では、1社あたり平均して20種類のSaaSを使っているといわれている。そのデメリットは、データが各SaaSに点在してしまい、管理や運用が煩雑になることだ。それを防ぐためにSaaS間の連携を行うための仕組みがAPIだ。APIによって外部のソフトウェアと簡単に連携できるからこそ、得意領域に特化したSaaSが増えている。
API連携で囲い込みが難しくなった?
一昔前のBtoB向けソフトウェアは、自社開発した複数のソフトウェアで顧客を囲い込むことが多かった。
会計ソフトを中心とした奉行シリーズや弥生シリーズなどはその代表格だが、会計から給与計算、販売管理などの周辺機能を同一シリーズ内で連携できることを特徴とし、セットで販売して販売単価を上げていくビジネスモデルである。
しかし、この同一シリーズで囲い込むというやり方は少しずつ難しくなっている。SaaSでは「外部のソフトウェアとつなぐことができるのは当然」という価値観があり、API連携に消極的なものは敬遠されるからだ。
これまで外部とのAPI連携に消極的だった奉行シリーズも、20年1月に「奉行APIコネクトサービスライブラリ」を公開するなど、API連携の広がりはソフトウェアの販売戦略にも大きな影響を与えている。
したがって何でもできる総合的なソフトウェアではなく、会計や給与計算、勤怠管理などの単一領域に絞ったソフトウェアが増えてきている。広く浅くではなく、対応領域は狭くても深く掘り下げた機能で勝負し、周辺領域の機能はAPI連携することで補う戦略だ。
ユーザー側も、API連携ができるのであれば無理に同一シリーズでソフトウェアをそろえる必要もない。バックオフィス系のSaaSでも自社の得意領域に集中することで、ユーザーから圧倒的な支持を獲得しているものが増えている。その代表格として労務管理SaaSのSmartHRを紹介する。
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