SaaS導入で意識すべき、バックオフィスの3階建て構造:本当に効率を上げるためのSaaS(2/3 ページ)
今回は、SaaSを使ってバックオフィスを再構築する上で欠かせない業務設計について見ていく。その際のポイントは3つある。(1)全体最適の視点を持つ(2)自社にあったSaaSを選ぶ(3)会計処理を意識する だ。
3階建てのバックオフィス
バックオフィスは、3階建ての構造になっていると筆者は考えている。1階が給与計算や経費精算などのフロントの業務、2階がそれらを最終的に決算書の形へと変える経理処理、そして3階ができ上がった決算書を活用した経営管理、という3段階だ。図にするとこのようになる。
従来の経理処理では、1階と2階は処理フローもデータ管理も切り離されていた。経理は1階の各処理が終わった後、またゼロから経理データを作成するという対応を行っていた。それが、SaaSによって1階部分の処理がデジタル化され、そのまま2階に連携できることが経理業務全体も効率化した。
日本でも2000年前後に大企業を中心に導入が進んだERP(Enterprise Resources Planning)が、業務と経理を一貫処理する思想で作られている。企業の基幹系業務のデータが迅速に集約されることで、経営判断を素早く正確に行うことができる。
ERPは導入費用に最低でも数千万円かかることもあり、導入のハードルはかなり高かった。しかし、SaaSとAPI連携の普及によって、中小企業でも1階から3階までを一貫して管理することが可能になってきている。
この変化に、バックオフィスも事務処理センターのままではいられない。スマートフォンの普及によって、この10年で私たちの生活が大きく変わったように、SaaSの普及もバックオフィスの役割を大きく変えるだろう。
AIを含めてシステムが代替できるのは、まだ当面は単純な処理にとどまるので、システムをうまく活用して効率を上げたり、ミスを発生させたりしない仕組みを構築できることが、バックオフィスには求められるようになっていく。SaaSを活用した効率化には、SaaSの機能も重要だが、業務設計の観点で全体を見直すことができるかどうかがポイントになるのだ。
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