テレワーク中にサボっていないか、日本企業が従業員を熱心に監視してしまう理由:働き方の「今」を知る(2/6 ページ)
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。それなのに、なぜこうなってしまうのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏は、海外のケースを引きながら、「サボり」に対する国内外の温度感の違いを指摘する。
欧米のエリート層は、日本以上にハードワーカー
われわれは日本的な「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」といったシステムを当たり前のものとして育ってきたためイメージがわきにくいが、これは世界的にみてかなり特殊なものである。しかも、日本とそれ以外の国の働き方を分ける大きな要素を、われわれは当たり前のように受け入れているのだ。
その要素とは、「日本企業は『全員が幹部候補になり得る』が、日本以外の場合、『幹部候補となるごく一部のエリートと、それ以外の大多数のノンエリートに厳然と区別』された構造になっている」ということ。専門用語では、国際的には「ジョブ型雇用」「職務給」であり、日本は「メンバーシップ型雇用」「職能給」と分類される。そしてこの点こそが、日本企業がブラック化してしまいやすい要因でもあるのだ。
欧米のノンエリート層は何年勤めようが、上位管理職に自動的に昇進することはなく、基本的には同レベルの現場実務を続けていく。そうやって実務スキルが習熟していくため、転職の際にもスキルセットで判断しやすく、比較的容易に転職ができる。また、「ずっとヒラ社員」の状態であるため、脱落や劣後といった心配もなく、休暇取得や育休取得に抵抗なく、どんどん休めるし、むちゃな長時間労働をする理由もない。そして、組織においてその仕事の必要がなくなったり、採用した人が契約に応じた働きができなくなったりすれば、企業は整理解雇をすることができる。海外では「簡単にクビになる」といわれるのはそのためだ。
このように、日本以外の多くの国では、「仕事」に対して求められるスキルや資格、経験が決まっており、資質をもった人がその「仕事」に対して応募して働くという形をとる。いわば「仕事に人がつく」形態であり、報酬も仕事に応じて決まるので「職務給」と呼ばれる
一方で日本はどうだろう。日本の「新卒一括採用システム」は、「会社組織」に対して「求める人物像」が決まっており、「意欲」「主体性」「粘り強さ」といった資質を持った人がその会社に応募して採用される。仕事は入社後、それぞれの人に合わせてあてがわれる形をとるので、「人に仕事がつく」形態であり、報酬は業務処理力(通常は年齢=年功)に応じて決まるため「職能給」と呼ばれる。これらは世界的に見てかなり特殊なものである。
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