テレワーク中にサボっていないか、日本企業が従業員を熱心に監視してしまう理由:働き方の「今」を知る(3/6 ページ)
テレワークで従業員がサボらず仕事しているかを“監視”するシステムが話題になった。テレワークは本来「成果」を出すためなら「働く場所」を問わない制度のはず。それなのに、なぜこうなってしまうのか。ブラック企業アナリストの新田龍氏は、海外のケースを引きながら、「サボり」に対する国内外の温度感の違いを指摘する。
日本企業が従業員を熱心に監視してしまう理由
良いか悪いかは別として、日本企業の建前は「全員が社長になれる可能性がある」という平等性を“売り”にしており、それゆえに「全員が出世を目指して頑張る」という姿勢が大前提となる。そして「メンバーシップ」の名の通り、入社したらその組織の「ファミリーの一員」のごとく扱われる。
ファミリーであるから、多少仕事ができなくても、また急な景気変動が起きて会社の業績が悪化しても、いきなりクビになることは基本的になく、賃金据え置き、異動や転勤、転籍、出向などの形で組織内には“温存”される形になる。となると、クビにはなりにくい代わりに、労働者は企業内の全ての業務に従事する「義務」のようなものが発生する。
結果として、「頑張っていない者」扱いされることを避けるために、会社の命令には素直に従い、また周囲の目を気にして権利であるはずの休みもとらず、長時間労働にいそしむ形となってしまいがちだ。すなわち、これまで私たちが慣れ親しんできた日本型の労働慣行には、「クビになりにくい代わりに、低賃金、長時間労働、転勤・転籍・出向といった条件を受け容れざるを得ない」という点でブラックな労働環境になりやすい要素が含まれている、ということになる。そしてそれが、業務時間内もしっかり献身的に働いているかを監視してしまうことにもつながる。
このように、個々人の業務範囲やミッションが明確で、成果が出なければクビになる、という背景が存在する諸外国と、個人の業務範囲は柔軟に変化し、成果を出さなくてもクビになりにくい日本では、そもそもの土壌がまったく異なるのである。
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