ドイツはどうやって「2日」で助成金支払いを実現したのか? 開発元銀行インタビュー:迅速なシステム構築の裏側に迫る(2/7 ページ)
コロナ危機に対して、ドイツ・ベルリンでは、助成金支給のシステムを2日で開設し、オンラインで申し込むと即座に5000ユーロが振り込まれるという、素早い対応を取った。この仕組みの裏側はどうなっているのか? ベルリンで給付を担当したInvestitionsbank Berlin(以下IBB)へインタビューした。
――IBBの普段の活動について簡単に教えて下さい。
ホルトカンプ氏 IBBは、ベルリン州の助成開発銀行(Förderbank)です。さまざまなビジネスや不動産事業を支援し、ベルリンをより良く、より住みやすくできるように努めています。
事業援助では、マイクロクレジットからベンチャーキャピタルまで、幅広い資金を顧客に提供します。ベルリンの起業家のための銀行として、イノベーター/スタートアップ/中小企業がさまざまなアイデアを実現できるよう支援します。このことにより新たな雇用が創出され、多くのインターナショナルな人々にとってベルリンが魅力的な街となるよう、願っています。
ベルリンに住んでいる、あるいはベルリンに住みたい人々のために、比較的安価な住宅援助も行います。そのため、不動産および都市開発ビジネスユニットでは、新しい賃貸アパート建設融資に重点を置いています。また、地球温暖化対策のため、IBBはエネルギー効率改善策も推進しています。
――コロナ危機対応として用意された援助金/助成金について教えてください。例えば、3月27日から支払いを開始した、Soforthilfe IとSoforthilfe II(Soforthilfeは「即時援助」の意味)の違いは何でしょう?
ホルトカンプ氏 コロナ救急援助金(Soforthilfe I)は、貸付期間最長2年、最大50万ユーロの無利子ブリッジローン(つなぎ融資)としての流動援助金(Liquiditätshilfen)で、中小企業が利用できます。申請は既に打ち切られ、全申請を現在処理中です。
コロナ助成金(Soforthilfe II)は、連邦政府によって決定された「コロナ保護シールド(Corona-Schutzschild)」からきたものです。自営業者、フリーランサー、最大5人の従業員を抱える中小企業が、最大9000ユーロまで申請できます。従業員10人の企業は、最大1万5000ユーロまで利用できます。
この助成金は返済義務がありません。IBBのWebサイトにてオンラインでのみ申請できます。3月に既に、ベルリン州は最初の前払いを行い、個人の自営業者、フリーランサー、および最大5人の従業員を抱える中小企業に、最大5000ユーロの助成金を提供しました。
――それに続いて、4月20日に、Soforthilfe IVとSoforthilfe Vという援助金パッケージの存在が報道されました。これらの概要について教えてください。
ホルトカンプ氏 5月11日からIBBで提供を開始したSoforthilfe IVは、11人以上の従業員を抱える文化/クリエイティブ/およびメディア部門の企業を対象としています。 5月18日に申請受付が始まったSoforthilfe Vは、従業員数11人以上の中小企業が利用できるものです。
――なるほど。単独フリーランス、および従業員数が少ない企業からまず援助を開始、だんだん従業員数が多い企業にも援助を行っていく、というシナリオが読み取れます。つまり、コロナ危機で潰れてしまう可能性の高い事業者から順番に救済すると。
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