「上司の顔色伺い」は激減? テレワークでは通用しない“働かないおじさん”:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
新型コロナによって、多くの企業がテレワークや在宅勤務の導入を余儀なくされた。今後は新しい働き方として定着していくだろう。そうなると、上司と部下の関係も変わる。前例や慣習が通じない世界が待っている中、新しい上司部下関係を構築していく必要がある。
「新しいカタチ」のつながりを
至極ポジティブに捉えると「ジジイの壁」を完全崩壊するチャンスが到来したのです。
これまでは新しいことをしようとすると「それって必要?」「それ、キミ責任とれるの?」と、自らの責任を放棄し、前例主義、教条主義に身を委ねる「ジジイの壁」が高く高くそびえ立っていました。
しかし、コロナ禍で強制的に始まったテレワークに、二の足を踏んでいたおじさん、おばさん社員も容赦なく巻き込まれました。なかにはWi-Fiのつなぎ方すら分からない「昭和の忘れ物」みたいな人もいましたが、時代の波に乗り遅れないように悪戦苦闘しています。
テレワーク拡大は「ジジイの壁」にほころびを生じさせたのです。「よいしょ、どっこいしょ、忖度」を必殺技に階層上階に上りつめてきた人たちが、働き方を変え、部下との接し方を変え、新しいことにチャレンジしなければあとがない環境に今、立たされているのです。
テレワークでちょっとばかり気後れしているおじさん社員もいると思いますが、謙虚に現実を受け入れ、「新しい上司のカタチ」と「新しい上司部下関係」づくりを頑張ってほしいと思います。
ただし、会社=COMPANY(カンパニー)とは「ともに(COM)パン(PAINS)を食べる仲間(Y)」ということを忘れないでください。企業が厳しい状況で生き抜くには、「1+1=3、4、5」というチーム力を高めることが必要不可欠です。生産性の高い、価値ある「会社=COMPANY」が会社たる意味は、チーム力にこそあります。
どんなに在宅で仕事をする機会が増え、会社に行く回数が減ったとしても、会社はコミュニティーであり、「社会的なつながり」と「自分の居場所」を見いだす機能をもっていることは変わりません。コミュニティーは、メンバーがお互いの存在に価値を感じ、自分の貢献がメンバーにプラスに波及すると信じられる集団でもあります。
ですから、無駄話をしたり、無駄な空間で無駄な時間を過ごすことも、大切にしてください。おじさんはちょっと手間がかかってめんどくさいかもしれませんが、案外、チームを支える見えない力を発揮してくれると思いますよ。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)。
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