ひとりで悩んでは出口が見つからない:集中連載 新型コロナで経済死しないための方法 (3/3 ページ)
「もうダメだ。死んでしまおう」と思う零細経営者の気持ちは、身を持って分かるし、役に立ちたい。そう思うと、しがない物書きの筆者にできるのは、切羽詰まった人が、生きるために役立つ情報の提供しかない。
ただ思うのだ。これがもし自分のためではなく、友人の苦境を救うためならば、きっととても頑張れる。実はこの頑張れるかどうかが一番大きな分かれ道なのだと思う。
だから、追い詰められてしまった時に最初にすべきことは、あなたのために頑張ってくれる人を見つけることだ。恥を忍んでSOSを出そう。そういう時は人に頼るしかない。精神状態がまともな人に教えてもらう。それしかない。曲がりなりにも経営者だったら、税理士や司法書士、行政書士とは何らかの付き合いがあるだろう。店商いとかならば商店街の組合も相談に乗ってくれるだろう。もうかっていた時期があるなら、弁護士との付き合いがあるかもしれない。
それもないなら取引銀行の担当者。筆者のように取引銀行なんて口座開設以来、ATMしか使っていないなら、知人・友人の中で銀行や役所に勤めている人でもいい。とにかくそういうお役所文書になれている人に、窮状を伝えてややこしい文章を読んでもらい、手続きのやり方を教えてもらうことだ。
もし本当に誰もいないのであれば、区役所や市役所にも相談窓口がある。日弁連も24時間オンライン相談窓口を設けているし、日中なら電話での対応もしてくれる(日弁連 新型コロナウイルス相談窓口)。初回無料となっているので、お金がないならないことも含めてまずは相談してみてほしい。相手はプロだ。そんなケースは過去にたくさん扱っているはずだ。
知人や友人だからといって、そんなことを無料で頼んでいいのか? 善良な人はそう考えると思う。実は補助金や助成金には、種別と相手の資格によって、法的に謝礼を支払っていいかどうかのルールがある。弁護士などの士業資格がないと、対価をもらって引き受けてはいけないものがほとんどだ。それも相手に教えてもらえばいい。ただ士業の人は別として、普通に考えれば、友人はお金は取らないと思う。
教えてもらう代わりに、言われたことは絶対にやること。相手は善意で、あなたに力を貸してくれているのだ。その好意を無にしてはいけない。個人向けの「特別定額給付金」10万円だけでなく、もしあなたの会社が株式会社なら最大200万円の「持続化給付金」が、個人事業主なら最大100万円が口座に振り込まれる可能性がある。それはまさに救いになるはずだ。
感謝の気持ちがあるのなら、あとで危機を脱出することができ、日常を取り戻せたら、その時にあなたにできるお礼をすればいい。人間、他人に頼らずに生きていくことはできない。自分が死んだ後始末だって自分ではできない。そういう迷惑のかけ方に比べれば、ずっとずっと救いはある。
限りある資金を、どういう順番で配分するか
ひとまず、精神的に衰弱しているあなたに代わって、あなたのさまざまな状況を解決してくれる協力者を得て、補助金と助成金を得られたとしよう。それで全てが解決するわけではない。ここから先は次回の内容になるのだが、ちょっと簡単に書いておこう。
まずは出血を止めること。経営をしていればさまざまな支払いがある。それらをどうするか。収入を増やすことができればいいが、新規事業の開拓、あるいは新しい顧客を探すなんてことは水物なのは、あなたもよく分かっていると思う。お金は詰まるところ、入りと出だが、入りは結局やってみないと分からない。筆者の過去の経験に照らせば、10にひとつも仕事が取れれば御の字だし、仮に上手くいっても、営業から受注までに2カ月、制作が2カ月だったとしても、そこから支払いサイトを含めれば、6カ月も先の入金にしかならないし、その間何かとコストが発生する。
確実にコントロールできるのは出る分だけだ。それをどう整理するか、頑張れば払えるのであれば、払えばいいが、逆さに振ってもないものはない。その時どうするか? そして限りある資金を、どういう順番で配分するかについての基本的な考え方を、ここではお伝えする。
さて、この記事を読んだ人の中で、もし切羽詰まった経営者がいるのであれば、まず手を上げて「助けてくれ!」と言ってほしい。何よりもそれが最初だ。できない時にできないことを自分でやろうとしても結果は良くない。できる人を頼るのだ。どんな時にも出口は絶対にある。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。
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