なぜ新型コロナで納豆や電子レンジの値段が上昇したのか? データで読み解く:物価は消費活動を映し出す鏡(3/3 ページ)
コロナ禍による経済環境の変化に伴い、経済指標や株価、為替などの情報に注目する人が増えてきた。物価はモノやサービスの値段という認識の人が多いかもしれないが、実は家計の消費行動を推察するのに重要な経済指標ともいえる。今回は直近の物価情報に基づき、新型コロナウイルスが人々の消費行動にどのような影響を与えたかを見ていきたい。
壊滅的なダメージを受けた産業も
これまでは新型コロナウイルスの影響で価格が上昇したものを見てきたが、価格が下落している品目を見ていこう。
まず宿泊料が大きく下落している。ここでも業界団体が公表するデータと掛け合わせてみよう。日本政府観光局が発表した「訪日外客数(JNTO推計値)」によれば、4月の訪日外客数は前年同月比-99.9%と、かつてない大幅減少となった。訪日外国人がほぼ皆無になっただけでなく、国内旅行も減ったため宿泊料は下落した。
国内でも自動車による県境を跨いだ移動を自粛する人が増えたため、ガソリンの需要がなくなり価格が下落した。更に、海外でのロックダウンなどに見られるように、感染拡大防止のため、意図的に経済活動を世界中で押さえていることから、海外の原油市場で原油価格が急落したことも影響している。
最後に少しマニアックな品目も見てみよう。まず、外出をしなくなったことで着用機会が減ったネクタイの価格は2月以降下落傾向にある。
そして、なじみのない品目かもしれないが、切り花の価格が下落している。これは新型コロナウイルスによって、入学式や各種イベントなどが一斉になくなったことによる需要減でもたらされたものだ。
怖いのはデフレスパイラル
消費者物価指数の細かい品目から私たちの消費活動の変化を見てきたが、これから日本経済にとって重要になってくるのは、再びデフレになってしまうか否かだ。19年の消費増税は景気後退の真っ最中に行われたと筆者は考えていて、その後、不運にも「泣きっ面に蜂」というかたちで新型コロナウイルスの問題が発生した。その結果、19年末から物価は下落し続け、ついには一部物価においてマイナスとなってしまった。
一度デフレ経済になってしまうと、企業の売り上げが下がり、結果として給与が削られ、それによって消費者の購買力が下がることによって、企業は更に売価を下げなくてはいけなくなり……というデフレスパイラルに陥ってしまう。今後も私たちは物価に注視していく必要があるだろう。
著者プロフィール
森永康平(もりなが こうへい)
株式会社マネネCEO / 経済アナリスト。証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとして日本の中小型株式や新興国経済のリサーチ業務に従事。
現在は複数のベンチャー企業のCFOや監査役も兼任している。
著書に『親子ゼニ問答』(角川新書)。日本証券アナリスト協会検定会員。Twitterは@KoheiMorinaga。
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