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コロナ禍でも好調ワークマンの意外な死角「在庫問題」――決算から徹底分析コンビニオーナー“大反乱”の真相(2/4 ページ)

コロナ禍でも好調な数少ないアパレル企業、ワークマン。しかし「在庫問題」という死角も。緻密な決算分析から迫る。

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好調の陰に見え隠れする「在庫増」

 決算短信にある数字で加盟店在庫と連動するのが、本部から加盟店への与信額を示す加盟店貸勘定(本部からの貸付、加盟店からみると借入)だ。19年3月末に約90億円だった加盟店貸勘定は20年3月末、約137億円に増加した。

 決算説明会資料では「増減要因」として「対象店舗数」が711店から819店に増えたことが記されているが、加盟店貸勘定を対象店舗数で割った1店当たりの貸勘定も約1264万円から約1670万円に増えている(下記の表参照)。説明会で小濱社長は、店舗数の増加とともに「売り上げの伸びに応じて店舗在庫が増加した」ことを加盟店貸勘定増加の要因に挙げた。

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ワークマンの貸借対照表の一部。加盟店貸勘定も本部在庫(=商品)も急増している(同社「2020年3月期決算説明会」より。赤い線の囲みは筆者)

 貸借対照表からは、加盟店在庫と連動する加盟店貸勘定とともに「商品」、つまり本部在庫が増えていることが分かる。つまりワークマンは2020年3月期、本部でも加盟店でも在庫がかなり増えたことになる。

 加盟店の在庫増を推察させるもう1つの数字が「加盟店向け商品供給」だ。これは海外工場に作らせたり国内メーカーから本部が仕入れ、いったん本部の在庫になった商品を加盟店に送った(売った)額を指す。

 19年3月期は約402億円だったが20年3月期には約598億円と、約49%増えている。売上の伸びに対応するものだが、チェーン全店売り上げの増加は約31%なので、加盟店が客に売った売り上げよりも本部が加盟店に送り込んだ商品の方が、より増えていることになる。

 特に第2四半期(19年7〜9月)は加盟店向け商品供給が前年同期と比べ約74%も増えている。「昨年の秋冬ものが過剰在庫になっている」という、筆者の取材に対する一部加盟店の話とも符合する。

 もう1つ、過剰在庫につながりがちなのがPB(プライベートブランド)商品のアイテム数の急増だ。20年3月期は404点(約39%)増え、1426アイテムになった。ワーク&アウトドアの「フィールドコア」、ワーク&スポーツの「ファインドアウト」、高機能レインウェアの「イージス」という3ブランドを中心に新商品を投入したことが、PB比率をチェーン全店売り上げの51.4%に、PB商品売上高を約626億円(前年比70%増)に引き上げた好業績の一因であるのは間違いない。

 ただ、PB商品だけで1426アイテム、他にNB(ナショナルブランド)商品も扱うのは、発注や品出し、顧客の問い合わせへの説明など、店舗運営のキャパシティーを超えてはいないか。ヒット商品を息長く育てるよりも、少しだけ違う類似商品を次々投入しているように見えるのも気にかかる。

 こうした疑問をワークマン財務部IRグループの担当幹部にぶつけた。

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