起業家が新型コロナで経済死しない心構え:集中連載 新型コロナで経済死しないための方法 (3/3 ページ)
12年間零細企業を経営してきて、分かったことがある。起業の成功は果たして何で決まるのかといえば、身も蓋もないが、一番大きい要素は「運」だ。「不運だから仕方ないよね」で済めばいいのだけれど、少なからぬ痛手を負う。この運と闘って勝つ方法は、勝つまでやり続けるほかにないのだから、痛手を一回で致死量にしない工夫が一番大事だ。
起業家の資質
だからこそ、起業家の資質がある人が資金繰りなんかに忙殺されていてはいけないのだ。メンタルがネガティブになったら、新しいことに挑むエネルギーは出てこない。公的制度でも友人の力でも動員して、お金の話は切り離すことだ。
筆者は、過去に随分いろいろな人にインタビューする機会に恵まれてきたが、その中の忘れられない一人に、北城恪太郎さんがいる。肩書がたくさんあって大変だが、経済同友会の終身幹事であり、日本アイ・ビー・エムの名誉相談役でもある。
筆者が質問したのは、「起業家にとって最も大事な資質は何か?」という問いだ。北城さんは間髪入れずに答えた。「起業家にとって一番大切な資質は、ネアカなことですよ。事業なんていうのはやってみてダメでやり直し、またやってみてダメでやり直しの繰り返しです。そういう時に、何度も何度もアイディアを出していくためには、ネアカじゃないと無理なんです。ネクラな人だと心が折れちゃう。だからボクはいつも大事なのは『ATM』だと言っているんです。『明るく、楽しく、前向きに』の略なんですが、実は日本で初めてコンビニにATMを導入したのはIBMなので、ATMへの思い入れもあるんです」
起業家は「明るく、楽しく、前向きに」とはまさに言いえて妙である。だから起業家は、常に自分の機嫌をとってやらなくてはいけない。考えてもみよう。零細企業の社長は、自分がエースで四番なのだ。その本人が不調だったらゲームに勝てるはずがないではないか?
生き物である以上、ダメな時もある。だから手を挙げて助けを求める。自分が一番重要なところに集中するために、外部の力をうまく使う。
そして何度でも失敗できる仕組みを作る。起業家とは、失敗と戦い続けるプロなのだ。そのプロが失敗して自殺するようでどうするのだ。常在戦場ならぬ常在失敗である。
そうやって折れずに戦い抜ける起業家こそが日本の財産なのだ。成功するかどうかは挑戦し続けることに比べれば、そんなに大したことではない。それは本当だ。
と分かっていても、明日の支払いに汲々(きゅうきゅう)としない生活を手に入れたいのは筆者も一緒だ。どうかこのコロナの時代を「明るく、楽しく、前向きに」生き抜いてほしい。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答を行っている。
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