アフターコロナは「バブル一直線」? 上昇止まらない株価:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
足元の景気動向は、コロナ前と同じレベルまで回復しているとはとても言い難いなか、日経平均株価の反転攻勢が止まらない。6月3日の日経平均株価は2万2613円と、コロナ前の水準まで回復した。その背景には、コロナ禍中の緊急的な金融政策の存在が大きいと考えられる。
それでは、コロナ禍中にどのような政策が展開されたのだろうか。まず、世界でも特に大胆な金融政策を展開した国は米国だろう。米連邦準備理事会(FRB)は、3月3日、15日に合計1.5%の緊急利下げを実施し、4月には無制限の量的緩和と、2兆3000億ドルの緊急資金供給策を決定した。特に注目すべきは、今回の緊急資金供給策の一つに、投資不適格社債やローン担保証券といったリスクの高い金融商品を、買い入れ対象に組み入れた点だろう。
これまでのFRBは、一般に投資適格とされる「BBB」以上の格付けがされた債券のみを買い入れの対象としていた。しかし、コロナによる影響が本格化する3月22日まで投資適格であった社債は、「BB」という投資不適格級に格下げされても買い入れ対象にできる。
FRBがリスクの高い債券を買い入れると、そのような債券の価格は全般的に上昇し、運用利回りが低下することになる。このとき、一般に、市場参加者はそのような社債市場よりも、株式市場を選好することになるだろう。なぜなら、FRB発の資金流入の影響で利回りが低く抑えられている社債市場よりも、そのような影響のない株式市場に資金を投じる方がリスク中立的な投資判断となるからだ。したがって、FRBの高リスクな社債の買い入れは一般的に株価にポジティブな要因となりうる。
一方で、そのような政策を展開する米国よりも素早く株価が回復したのが日本市場だ。
日経平均株価は3月19日に16552.83円でいったんの底打ちをして以降、4月の緊急事態宣言をもろともせず上り調子となった。投資部門別売買動向によれば、これまで売り基調であった外国人投資家も、5月第3週に大幅な買い越しに転じたことも後押しする形となっている。
確かに、足元の株価上昇は、国内におけるコロナ感染動向にいったん終息の兆しがみえたことを好感する動きも織り込まれているだろう。しかし、コロナ禍の動向が当時未だ不明瞭であった、3月中旬の時点から戻り幅が大きい点を見過ごすことはできない。
日本銀行も国債の無制限買い入れをはじめとした追加の金融緩和を実施しているが、株価に直接影響を与えている金融政策といえば、やはり日銀のETF買い入れの影響が少なくないだろう。
連載の第14回で触れた通り、日本銀行は20年3月までに2兆5000億円以上のETFを市場から買い入れており、最も株価下落が激しかった3月だけで、1兆5799億円のETFを買い入れている。4月、5月は買い入れペースが緩やかになっているとはいえ、2カ月で1兆7000億円を追加で買い入れており、この日銀マネーが株式市場の売り圧力を下支えしている可能性が高い。
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