ハンコの老舗企業「シヤチハタ」はなぜ、20年以上も前から電子決裁サービスを提供し続けているのか:「Windows 95」を機に開発(1/4 ページ)
テレワークで注目が集まる契約や決裁業務の電子化。これをいち早く始めていたのが、ハンコの老舗企業であるシヤチハタだ。同社はWindows 95の発売を受け、電子化の未来を予見し、20年以上前から電子決裁サービスを提供している。3月には期間限定でのサービス無料提供を発表し、話題になった。
認め印として使っている人も多い朱肉不要のインク浸透タイプのハンコ「シヤチハタ」。実はこれは製品名ではなく、シヤチハタ株式会社の社名が代名詞として広まったもので、正式名称は「Xスタンパー」。1968年に発売した初代ネーム印からの累計出荷本数は1億8000万本を超えるロングセラー商品だ。
シヤチハタは、ばりばりのハンコ企業に見えるが、実はPC向けに印影を押す商品も販売している。しかも、発売したのは何と1995年だというから驚く。Microsoftがオペレーティングシステム「Windows 95」を出すというニュースから、電子化の未来を予見し、いち早く動いたのだという。そのプロダクトは現在、クラウド電子決裁サービス「パソコン決裁Cloud」に進化している。
2020年3月、新型コロナウイルスの影響によりテレワークが増えると予見した同社は、パソコン決裁Cloudを6月30日まで無料開放すると発表した。今回は、同社がサービスを始めた経緯や意図について、システム開発部 部長 小倉隆幸氏にお話を伺った。
1995年にペーパーレスの未来を予測した
シヤチハタが電子印鑑システム「パソコン決裁」を始めたのは、1995年にさかのぼる。当時の日本は今以上にばりばりの紙文化社会で、何でも紙で回している状況だった。そんな中、同社は今後、急激に世の中が変わるのではないか、と考えた。「ペーパーレス」という言葉がまだビジネス界に定着する前から、紙がなくなる世界を予測していたのだ。
「紙がなくなると想定した場合、われわれの生命線がなくなってしまいます。MicrosoftがWindows 95をリリースするという情報を得て、(パソコン決裁を)すぐに開発し始めました。次の時代に対する危機感から、この事業をスタートさせたのです。当時のネット回線はISDN回線で、通信速度は遅く、小さいファイルを送るのにも苦労していたので、今から思い起こせば、着眼は早かったかも知れません」と小倉氏は振り返る。
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