ハンコの老舗企業「シヤチハタ」はなぜ、20年以上も前から電子決裁サービスを提供し続けているのか:「Windows 95」を機に開発(2/4 ページ)
テレワークで注目が集まる契約や決裁業務の電子化。これをいち早く始めていたのが、ハンコの老舗企業であるシヤチハタだ。同社はWindows 95の発売を受け、電子化の未来を予見し、20年以上前から電子決裁サービスを提供している。3月には期間限定でのサービス無料提供を発表し、話題になった。
「紙とハンコ」文化にうまく取り入った
「パソコン決裁」の最初のバージョンは内容もシンプルで、言ってしまえばWordに印影イメージを貼るだけのものだった。当時、小売店などにあるレジスターはロール式の紙に会計金額などを版で押していたのだが、同社はその版を製作していた。印影の元となる版下をデータで作っていたため、その技術を流用して電子でも印影イメージを作成できたのだ。
「その後、機能を進化させていきました。例えば、押印したら、ファイルをリードオンリーにして、文書を編集できなくすることで原本性を確保しました。なりすましへの対処としては、印影の裏側に押印したユーザーの情報をプロパティとして取り込みました。その他にも、過去の日付の電子スタンプを押せるようにしたり、次の承認者に対して傾けて押印する“おじぎ印”もできるようにしました」(小倉氏)
日本のビジネス文化には「紙とハンコ」の文化が根付いている。書類を決裁するのに早くても1週間、長ければ1カ月かかるのもままある。途中で書類がなくなるのも日常茶飯事だ。また、ハンコは取り扱いに注意を要する物品なので気軽に社外に持ち出すことができず、社内で決裁しなければならない。管理職が出張していると承認フローが止まってしまうし、重要書類を回しているのに、今どうなっているのか誰も状況を把握できないということもある。
また、ワークフロー製品の多くは押印機能を搭載しておらず、システムログを取って対応している。当然、紙の文化にはなじまないので、運用する現場には負担がかかってしまうという。契約書で使える電子決裁サービスは多々あるが、「パソコン決裁」は契約書も含めて日常的に決裁する書類をまとめて扱えるのが特徴だ。契約書にとどまらず、経費精算のような定型的な処理など、幅広く何でも受け付けられれば、多くの人に便利に使ってもらえると考えたそうだ。
「パソコン決裁は紙の運用をほとんど変えずに、電子決裁の場合でも押印し、誰が承認して、どこまで書類が回っているかが分かるのがメリットです」(小倉氏)
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