DXのために必要なのは「イケてるITシステム」ではない、と言い切れるワケ:偉そうなオジサン社員に大打撃(2/6 ページ)
新型コロナでテレワークが浸透し、デジタルトランスフォーメーションの機運がこれまで以上に高まっている。高度なITを使い華々しく語られることも多いDXだが、筆者はDXに高度なITは必要でない、と指摘する。
言葉を変えることが有効な事例
私たちコンサルタントは、クライアント企業の現場に入って組織改革をする際、だいたいのケースにおいてプロジェクトチームをつくる。そしてそのプロジェクトチームには必ず名前を付ける。その名前には、決して「生産性アッププロジェクト」とか「コスト削減プロジェクト」「組織改革プロジェクト」といった、誰もが分かりやすく、しっくりくるようなものを付けることはない。
多くのケースでは社名の一部や、実現したい年度、目標指数などを取り入れてネーミングする。例えば「横山建設」という会社の残業削減プロジェクトであれば、「YK20プロジェクト」でいい。YKは「横山建設」を意味し、毎月の残業時間を20時間以内に抑えるという意味で「20」をプログラム名に入れる、というわけだ。このように、ちょっと考えないと「何をするのか」が思い出せないような名称をつけることが大事だ。
私のキャッチコピーもそうだ。私はいつも「企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタント」と名乗る。「目標達成」よりも「絶対達成」という表現をあえて使う。正直なところ、目標達成も絶対達成も同じ意味ではある。目標達成に「絶対」も「非絶対」もないからだ。しかし絶対達成という表現を使った方が、クライアント企業は緊張感を持ち、これまで以上に目標を意識付けさせることができる。絶対達成という言葉を使った方が、現場スタッフに対してインパクトを与えられ、その結果として組織文化が変わりやすいということはこれまでの20年近いコンサルタント経験を通して実感してきた。
当たり前かもしれないが、言葉もツールなのである。新しい概念を取り入れ、組織が変わっていこうとするケースにおいては、あえてしっくりこないような言葉を使うのがよいのだ。だからロックダウン、オーバーシュートなど、不慣れな言葉でもどんどんと使った方がいいのだ。
今回テーマにするDX(デジタルトランスフォーメーション)もそうだ。
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