DXのために必要なのは「イケてるITシステム」ではない、と言い切れるワケ:偉そうなオジサン社員に大打撃(3/6 ページ)
新型コロナでテレワークが浸透し、デジタルトランスフォーメーションの機運がこれまで以上に高まっている。高度なITを使い華々しく語られることも多いDXだが、筆者はDXに高度なITは必要でない、と指摘する。
デジタライゼーションとDXの違い
今日、日本の企業は2つの理由でDX――つまりデジタルトランスフォーメーションを有効活用すべきといわれている。理由の一つは働き方改革で、もう一つはもちろんコロナの影響があるからだ。これからは間違いなく、デジタルの力で生産性をアップした企業が生き残る。それはもう疑いの余地はないだろう。しかし残念ながらこのDXはとても難しいものだと勘違いされているように思える。
具体的に見てみよう。報道などで目にするDXの事例は次に挙げるようなものばかりだ。
例えば、Amazonはカスタマーレビューやレコメンデーション機能を充実させ、最高の顧客体験を提供している。Spotifyのビジネスモデルは、5000万曲もの音楽をスマートフォンなどで視聴できる定額サービスだ。顧客体験もそうだが、稼ぎ方そのものも従来の通販や音楽ビジネスから大きくトランスフォーメーション(変容)している。
確かに、DXというのは、ビジネスモデルや組織文化そのものを根本的に変容させるという意味では、ハードルが高そうに感じるだろう。しかし、決して大企業や先進企業でないと手を出せないような代物ではないと強調したい。昨今、いろいろな言葉が新たに登場しているが、AI、RPA、5G、IoTといったものと比べると、DXはまったく違うポジションにあると考えている。
また、DXを理解する上で、最低限知っておいてほしい知識がある。それが、デジタライゼーションとDXとの違いだ。
一般的に、アナログのものをそのままデジタル化することを「デジタライゼーション」と呼ぶ。一方でDXというのはデジタルの力で、経営やビジネス、生活などを根本的に変容(トランスフォーメーション)させることを指す。つまり、DXというのは、どちらかというとその道具を使う人の行動や考え方、価値観そのものを変容させることが目的だ。
従って、デジタル化されたツールがそれほど高度でなくてもいいし、必ずしも最先端の技術を使っていなくてもいい。重要なことは「その道具(デジタル化したツール)を使っていったい何を実現するか」である。そして、DXという言葉を意識することも必要だ。そのことによって、デジタライゼーションとはどう違うのかを自ら意識し、DXを進める意義についての理解を深めることができるからだ。
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