アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が指摘「Netflixで制作費が増えても、現場のアニメーターには還元されない」:アニメ業界の「病巣」に迫る【後編】(5/5 ページ)
日本のアニメーション業界にはびこる低賃金や長時間労働といった過酷な労働現場の実態――。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の総作画監督を務める西位輝実さんにインタビュー。後編では西位さんに、Netflixをはじめとする、近年の日本アニメに進出している海外資本のビジネスについて聞いた。
今のアニメ業界の実態を知ってほしい
――本来であれば、現場のクリエイターである西位さんにこういった話をお聞きして、問題の矢面に立たせてしまうのも、個人的にはどうかなと思っているんです。
私も悩んだんですけど、今、メインで作品を持っていないというのが大きいですね。これが『ジョジョ』をやっていた最中だったら、『アニメーターの仕事がわかる本』は絶対に出していないと思います。いろんな人に迷惑が掛かってしまうので。私は今、アニメ業界から一歩引いている感じになっていて、作品に直接迷惑が掛かるわけではないので、まぁいいかなと。
――では西位さんが、この問題についてここまで発言する理由は?
「怒り」ですよね。自分以外の人も含めて、みんながこんなにがんばっているのに、何で報われないの!? っていう。好きで始めた仕事なんだから、もうちょっとキラキラしててもいいはずなのに。
基本的には、誰も敵ではないんです。「作品の人気が出てヒットしたらいいな」というのは、会社も現場のスタッフも、みんなが思っていることなので。でもそれだけに、難しいですよね。
――西位さん自身、子どもの頃に見た『聖闘士星矢』に憧れて、今ではNetflixの『聖闘士星矢: Knights of the Zodiac』でキャラクターデザインを手掛けるまでになっているわけですよね。
そうなんです。私自身、憧れた作品があってアニメ業界に入ってきて、自分のやりたいことをかなえてきたはずなのに、それで残ったのが「怒り」だというのに腹が立つんですよ。
できればアニメファンの人たちに、今の実態を知ってほしいんです。テレビの放映が落ちたら「いい決断だ」「応援しています」と、ファンのみなさんは優しいコメントをくれるけど、本当は大変なことなんです。制作会社はお金がなくなっちゃうんですから。
なので、ファンのみなさんにも今のアニメの実態を知ってほしいですし、そんなファンの人たちのためにも、企業や制作会社はアニメの作り方について、もう少し考えてほしいなと思います。
(了)
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