「髪切った?」はセーフ、「部屋汚いね」はアウト? テレワークで問題の“リモハラ”、なぜ起こり、どう防ぐか:人事部がやるべきこととは(3/4 ページ)
テレワークで新たに生まれてしまったハラスメント、「リモハラ」。ハラスメントへの視線が厳しくなる中でもなぜハラスメントは起こってしまうのか、そして、防ぐためにやるべきこととは? 専門家に聞く。
リモハラが起こるのはなぜ?
最近問題となっているリモハラ、これはなぜ起こるのか。あまりなじみのない言葉にも感じるが、具体的には、業務時間中にサボっていないかを確認するために、数分に一度連絡をさせたり、あるいは作業中のウィンドウのキャプチャーを撮影して送らせたり、さらには勤務時間中はPCのカメラを起動させ、監視するというケースもあるという。
リモハラの中でも、こうしたパワハラ的な言動が起こってしまう背景には、マネジャー層の「焦り」があると倉本氏は指摘する。これまでと違い、仕事をしている姿が間近で見られないため、本当に仕事をしているのか不安になり、監視してしまうのだ。また、チャットなどの文章だけのコミュニケーションでは、言外のニュアンスをうまく伝達しづらく、時には意図せず攻撃的な印象を与えてしまうこともある。不用意にパワハラ的印象を与えないためにも、相手が読んだらどういう受け止め方をするかを念頭に置くことも重要そうだ。
リモハラには、パワハラ的なものだけではなくセクハラ的なものもある。例えば、必要以上に服装や部屋の内装に関して言及したり、特に必要もないのにWeb会議などと称して呼びつけることなどが挙げられる。倉本氏がこれまでに聞いた例だと、Web飲み会中に服を脱ぎ出してしまうような人もいたという。Web会議システムを使っていれば簡単に録画ができ、何かあった際には証拠にもできるにもかかわらず、どうしてテレワークでもセクハラが起こってしまうのか。
倉本氏は「セクハラは錯覚から起きるもの」と説明する。Web会議では、バーチャル背景などを設定していなければ、これまで見る機会もなかった従業員の部屋が見える。だからこそ、相手の部屋に入ったかのような気になり、浮かれてしまって不必要な言動をしてしまうのだという。また、テレワークならではのものとして「距離の近さ」も倉本氏は挙げた。Web会議では、基本的に顔が大写しになる。通常、会って話をしてもここまで距離が近くなることはあまりない。この近しさが、親しさの錯覚につながり、不用意な言動につながるのだという。
「髪切った?」はセーフ、「部屋汚いね」はアウト?
ここまで話を伺って気になるのが、ハラスメントかどうかの線引きだ。Web会議では、いきなり相手の顔が大写しになる。通常の会議であれば、名刺交換の時間などもあったり、訪問したオフィスで目にとまったオブジェなどがあれば何となくそこから始まる雑談もあったりするが、Web会議ではない。
また、沈黙が訪れた場合には、通常以上に気まずさを感じることもある。こうした時間をなくすために、苦し紛れに目に見えている部屋の風景などを話題に取り上げる人もいるだろう。偶然、自分の好きなアーティストのポスターや、漫画が見えることもあるかもしれない。そういう場合でも、話題にするのはアウトなのだろうか。
倉本氏は、「必要以上に踏み入らなければ、問題ない」と見解を示す。例えば、髪の毛を切った場合は「髪切ったんですね」、部屋の内装については「おしゃれな部屋ですね」といった肯定的に、かつ根掘り葉掘り立ち入らなければ円滑なコミュニケーションとして“セーフ”。これが、「髪切ったんですね。失恋でもしたんですか?」「部屋、汚いんだなあ。仕事ぶりがこういうところに出るんだよ」と立ち入りすぎてしまうと、アウトになる。
関連記事
- リモートワークでも、社員の心の健康を維持するために
リモートワーク期間中、人事部門の中には「コミュニケーションが不足して社員のメンタルが弱ってしまうのではないか不安」と考える人もいるのでは。人はどういうときに病むのか、どういうときに元気を取り戻すのか、社員研修のプロが解説。 - 「上司と部下」からパートナーへ これから求められるマネジャーの姿とは?
新型コロナで巻き起こった急激な変化。コミュニケーションやマネジメントの形にはどういった変化があり、これからマネジャーに求められるものとはどういった要素なのだろうか。コミュニケーションに関するサービス「KAKEAI」を提供するKAKEAI社の本田社長に話を聞いた。 - KDDIの「社内副業」、社員側のメリットは本当にある?――担当者に直撃
KDDIが「社内副業制度」を導入。本業と別の業務に志願できるが別枠の給与がもらえる訳ではない。その真の狙いと意義とは? - なかなか進まぬ「障害者雇用」 在宅勤務がカギになりそうなワケ
18年4月に引き上げられ、21年にもさらなる引き上げが予定されている「障害者法定雇用率」。ただ、実際は達成できている企業がなかなか増えていない。多様性を持つ社会の実現に向けて、どういった打ち手を出していけばいいのか。リクルートオフィスサポートで障害者雇用に取り組み、都市部と地方部の企業と障害のある人をマッチングする事業会社「カラフィス」を設立した三井正義氏は、新型コロナの影響で浸透する「在宅勤務」がカギになると予想している。 - コロナで広がる採用格差 「採用弱者」にならないために採用担当者が知るべきコト、やるべきコト
新型コロナでこれまで以上に広がっている採用格差。ウィズコロナ、アフターコロナで「採用弱者」にならないために、採用担当者が知っておくべきこととやるべきことはどんなことなのだろうか? 人事領域に詳しい高橋実氏が解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.