古いビルからビジネスが生まれる、新しい「有楽町」 ポストコロナ時代に存在感を放てるか:ハードとソフトの両面から再開発(2/3 ページ)
三菱地所は今後10年の東京・丸の内周辺のまちづくりにおいて「有楽町」を重点エリアとしている。ビルの建て替えなどのハード整備だけでなく、古いビルを活用したソフトの取り組みを強化。「活躍できる」「成長できる」街を目指す狙いとは?
築50年以上のビルから「新しいアイデア」を発信
有楽町エリアの再開発に先駆けて、多様な人材が活躍できる仕組みを模索するプロジェクトとして、「Micro STARs Dev.(マイクロスターズディベロップメント)」を19年末に始動した。このプロジェクトでは、会員制ワーキングコミュニティーや、テストマーケティングができる多機能型市場を開業。8月には、米サンフランシスコ発の体験型小売店「b8ta(ベータ)」もオープン。スタートアップを含むさまざまな企業に商品の出品スペースを提供する店舗となる。
象徴的な取り組みでもある会員制ワーキングコミュニティーは、「有楽町『SAAI(サイ)』Wonder Working Community」という名称で、2月に開業した。“社内起業家”を主なターゲットとしたコミュニティーで、個人のアイデアを事業化するための支援や相互交流の場として機能させる。現在は200人程度の会員がいる。
ワークスペースや交流スペース、プレゼン用ステージなどを備えた拠点を構え、企業に在籍しながら新しいことへの挑戦を目指す人、企業の新規事業担当者などの社外活動の場とする。会員のステージに合わせて、起業や事業開発の知識を提供したり、ビジネスプランをブラッシュアップしたりするプログラムも提供。会員自らテーマを設定してプロジェクトを立ち上げることができる仕組みも導入している。
「SAAI」の拠点は、JR有楽町駅前に建つ新有楽町ビルの10階。1967年に建てられたビルのワンフロアをリノベーションし、約1000平方メートルの広さの施設を設けた。古いビルを活用した取り組みの一つとなる。
ワーキングコミュニティーや多機能型市場などの取り組みは、新しいアイデアを育てることが狙いだが、新しい建物ではなく、建て替え前のビルに拠点を置いていることがポイントだ。有楽町には今後建て替えの検討対象となるビルが複数ある。まずはそういった既存のビルから活気ある雰囲気を生み出し、その知見を今後の再開発ビルに生かす。「新しいビルができるまで待つのではなく、将来的にやろうとしていることを既存の建物で実践し、それを新しいビルに取り入れる。連なるように取り組みを続ければ、建て替え中も街の活気は途絶えない」(吉村氏)
SAAIは、開業から約2カ月で新型コロナの影響によって施設を休業。しかし、休業中もオンラインイベントの開催や、オンライン会議システムを活用した交流などを実施した。6月からは施設利用も再開しているが、今後もオンラインを活用しながら事業化支援などに取り組んでいくという。「コミュニティーが個人の成長や経験につながったという事例を出していきたい」と吉村氏は話す。
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