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単なる“ワーク”と化す? 「ワーケーション」普及が幻想でしかない理由:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
旅先で仕事をするワーケーションについて、政府が普及に取り組む考えを示した。しかし、休暇中でも休まらないという問題があるほか、対応できるのはごく一部の企業。テレワークさえできていない企業も多い。IT環境整備をするなら、日常の生活圏を優先させるべきだ。
旅先で仕事、「休まらない」が問題に
しかも、ワーケーションが米国で生まれた背景には、欧州に比べて労働時間の長い働き手の「休みを増やす」という目的がありました。つまり、「リゾートで休んでいるのに、そこで仕事をして出勤扱いにしちゃえば、一石二鳥になるのでは?」という発想です。
しかし、実際にはPCでオフィスとつながれてしまうと、「休暇中でも働け!」と言われているようで、ちっとも心も体も休めない。休みが増えるどころか、減ってしまうという問題が指摘されているのです。
休日に仕事のメールが来るだけでもストレスなのに、せっかくのバカンスで上司とZoomでやりとりしたり、「明日までに仕上げておけ」なんてことを言われたら……。会社に行った方がまし、ということになりかねません。
特に、日本では「会社文化」が染み付いていますから、ワーケーションなど絵に描いた餅。それに対応できる企業も人も「コロナの影響を受けてない」層に限定されることでしょう。
偉い人たちが想定している「一般社会」とは、大企業、正社員、長期雇用で働く、生活基盤が安定している人たちであって、中小企業、非正規、低賃金で働く人など目に入っていないのです。
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