総務のテレワークを巡る「衝撃の数字」 フルリモート実現の急所とは?:「総務」から会社を変える(3/4 ページ)
『月刊総務』編集長の豊田健一氏による、総務とDXを巡る連載。総務のテレワークに関する調査で明らかになった衝撃の数字を基に、総務のフルリモートを実現するための急所はどこにあるのかを解説する。
大企業主導で動くべきだ
取引先から物理的に届くものやハンコ文化については、自社だけではなんとも解決ができず、発送元の協力も必要となる。それも、力関係で言えば、大企業から変わってもらわないと、なんともならない。その点、この4月に経団連の中西宏明会長が記者会見で、日本企業に残る押印の慣行を巡り「ハンコ(に頼る文化)はまったくナンセンスだと思う」と語ってくれたのは、大きな前進である。
中西会長は続いて、「ハンコ屋さんには怒られるかもしれないが、私は海外生活も長かったので全て署名でいい。電子署名でもいい。ハンコは美術品で構わない」とし、企業や行政のやりとりをデジタル化するように強調していた。
そして、ついに政府も腰を上げた。6月に、民間企業や官民の取引の契約書で押印は必ずしも必要ないとの見解を、わが国の政府が初めて示したのだ。押印でなくてもメールの履歴などで契約を証明できると表明したことは、押印のための無駄な出社を減らし、テレワークを推進していく意志の表れであるといえる。
まずはペーパーレスから
緊急事態宣言も解除となり、何となくビフォーコロナに戻りつつある企業もある中で、結局、総務におけるペーパーレスの動きが頓挫することを懸念している。
やはり総務のフルリモート、さらには企業の生産性を高めるために重要なのは、ペーパーレスだ。実際、先述したフルリモートができている企業は全て、ペーパーレスを実践・推進していた。業務で必要な書類はあらかた電子化、それもクラウドストレージに収納されていて、在宅であっても仕事ができる。また、稟議や申請についても電子ワークフローで回っていく。ペーパーレスが実現していなければ、「押印」や「電話」をどうするか、どころの話ではないのは間違いない。
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