「しゃぶしゃぶ温野菜」爆発 なぜ報ステは「運営会社」を伏せたのか:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「しゃぶしゃぶ温野菜 郡山新さくら通り店」でガス爆発が起きた。多くのメディアは謝罪会見を取り上げたが、なぜか報道ステーションは運営会社の社名すら報じなかった。その背景になにがあるのか。
社名を伏せた背景
では、社名を伏せたのが「CM出稿企業の顔色を伺ったから」ではないとしたら、なぜ報ステはあんなトリッキーなニュースを放送したのか。
その場にいたわけではないので、ここからは完全に筆者の憶測だが、おそらくこれが報ステなりの「中立な報道」だったのだろう。
このような事故は原因究明に時間がかかる。フランチャイズの場合はそこからさらに加盟社と運営社のどちらに、どれだけ瑕疵(かし)があって、責任を負うべきなのかという問題が続く。つまり、今現在はコロワイドとレインズが先頭に立って謝罪をして、対応しますということになっているが、よくよく調べてみたら、加盟社の店舗管理に大きな瑕疵があったことが判明し、両社は単に巻き込まれただけに過ぎなかった、という可能性もあるのだ。
そういうシナリオを想定すると、この段階では運営会社のレインズやコロワイドまで出す必要はない、と判断をする人たちも当然いるのだ。両社にあまりフォーカスを当ててしまうと、しゃぶしゃぶ温野菜のビジネスモデルに大きな問題があるように世論を誘導してしまうかもしれない。そうなると、全国に展開している388店(2019年3月末 コロワイド中期経営計画より)への風評被害にもつながりかねないというワケだ。あくまで悪いのは加盟社単体で、しゃぶしゃぶ温野菜のブランドに罪はないという考え方である。
「そんな屁理屈が通用するわけがないだろ」とあきれる方も多いかもしれないが、実際にこのようなロジックが通用して、社名の報道を控えたマスコミがあるのだ。
2016年、しゃぶしゃぶ温野菜の千葉県のFC店で働いていた男子大学生が、店長から暴言や暴行を受けただけではなく、4カ月間も無給で働かされたと、FC加盟社を提訴したことがある。ニュースなどでも大きく取り上げられたのでご記憶にある方も少ないだろう。
その第一回口頭弁論で加盟社側の弁護士が傍聴席にマスコミに異例の「お願い」をした。「しゃぶしゃぶ温野菜という名称を報道しないでほしい」――。要するに、この問題は加盟社と、バイト契約をしていた大学生との問題であって、しゃぶしゃぶ温野菜は関係ない。ブランドのイメージに傷がついて、レインズや他のFC加盟社にも風評被害となるので、ちょっと配慮してくださいなというわけだ。
もちろん、ほとんどマスコミは「はあ、そうですか」と軽くスルーをしたが、この訴え通りに配慮をした心優しいマスコミも何社かあった。その中の1社がテレビ朝日だった。
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