台頭する“グレー”クレーマーの生態 悪質な苦情にどう対処すべきか:世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)
インターネットの普及で企業のクレーム対応は難しくなっている。最近は反社会的勢力による被害が減る一方、一般の消費者が迷惑行為をしてしまう“グレー”なクレームが増えた。どう対処すればいいのか。法律や対処後のフォローを念頭に置いた対応が効果的だ。
自らの“悪質さ”に気付かない、グレー・クレーマー
このグレー・クレームに詳しい、東洋大学社会学部教授の桐生正幸氏と、一般企業に勤める傍ら東洋大学で大学院生として犯罪心理学を専門に研究を続けている入山茂氏によれば、「グレーな消費者が行うクレームには、悪質な苦情もあります。ただグレーなクレーマーは、自分のクレームが悪質な意図があると考えていません。クレームがエスカレートする中で、自分がホワイトではなくなっていることに気が付かない人が増えているのです」という。
最近、桐生氏と入山氏らが執筆に加わった本『グレークレームを“ありがとう!”に変える応対術』には、現在の日本におけるクレームの実態を示すデータが紹介されている。
産業別労働組合のUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が2017年に行った「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査」によれば、業務中に悪質なクレームに遭遇した経験があると回答した人は、回答した4万9876人中70.1%に上っている。その内容は、暴言が66.5%、説教などは36.4%、威嚇や脅迫は35.2%、長時間の拘束は26.6%。セクハラ行為も13.4%あった。
暴言の実例を挙げると、例えば「ブス」「ババア」「バカ」「アホ」「低能」「殺してやる」「車でひくぞ」「土下座しろ」といった言葉が飛んでくるという。
反社会的勢力などに関係するブラックな消費者がかなり減っている現在、本来ホワイトだった一般の消費者らがこうしたクレームを申し立てる事例が増えている。つまり、グレー化が進んでいるのである。
そもそもクレーマー的行為をしてしまう人はどういう人なのか。桐生氏や入山氏などの研究では、例えば「自尊感情が強い」「社会への不満が高い」「完全主義的な傾向」「高い不寛容性と攻撃性」「威圧的な話し方」などが傾向として挙げられている。
関連記事
- “世界で最も心地よい”スニーカーは、日本でも爆売れするか
「世界で最も心地よいシューズ」と評されたスニーカーブランド「オールバーズ」が日本初上陸した。環境への配慮や履き心地を追求したシューズが、なぜここまで評価されているのか。その背景には、明確なビジネス戦略があった。 - スーツ姿のビジネスマンが「時代遅れ」になる日
米金融大手ゴールドマン・サックスが社内のドレスコードを緩めると発表した。米国企業では、職場の服装がカジュアル化しつつある。ビジネススーツが「過去の産物」となる日も遠くないかもしれない。 - 伝説的ギターの台帳に懸賞金 ギブソンが狙う「ブランド復興」
楽器メーカーの米ギブソンが、伝説的なエレキギター「1959年製レスポール」の販売台帳を見つけた人に懸賞金を支払うと呼びかけている。偽物が出回り、高額で取引されているからだ。一度は破産した同社が、歴史あるブランドを守り、復興させようとする一手だ。 - 何分後に雨が降る? 「ハイパー天気予報」が災害大国・日本を救うかもしれない
令和時代も自然災害への警戒が不可欠だ。そんな中、米企業のクライマセルが天気予報の概念を変える可能性があるテクノロジーを開発し、注目されている。従来よりも正確に予測できるという「ハイパー天気予報」とはどんなものなのか。 - 僕らのヒーローだったジャッキー・チェンが、世界で嫌われまくっている理由
香港アクション映画の象徴的存在、ジャッキー・チェンのイメージダウンが止まらない。隠し子である「娘」の振る舞いや、自伝で語られた「ダメ人間」ぶりなどが欧米やアジアで話題になっている。私たちのヒーローだったジャッキーに何が起きているのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.