「コロナでカジノは白紙」の今こそ、IRより“分散型リゾート”が必要な理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
新総理候補の菅氏の地元で進む、カジノを含む統合型リゾート誘致計画が新型コロナなどの影響で暗礁に乗り上げている。巨大ハコモノよりも持続可能性の高い「分散型リゾート」にシフトする好機だ。コロナ時代の宿泊スタイルとして注目される分散型のメリットとは?
「分散型」が生まれたイタリアと日本の共通点
さらに言えば、「分散型リゾート」は、日本全国で問題になっている空き家の問題、さらには「限界集落」などの言葉に象徴されるような地域コミュニティーの絶滅、集落の文化・歴史の消失という問題も解消できる。
「分散型リゾート」として成功すれば、客室や観光客の拠点となる施設などが多く必要になってくるので、当然、古民家や空き家のリノベーションが増える。空き家問題も解消されていくのだ。また、「分散型リゾート」で働きながら生活をしたいという移住者が増えれば、コミュニティーが若返り、集落の文化や歴史の引き継ぎがなされる。若者がどんどん大都市へ流出してしまう日本の地方にとって、これ以上ありがたい話はない。
なぜこんなにも「分散型リゾート」という考え方が、日本のさまざまな課題解決になるのかというと、「分散型ホテル」という考えが生まれたのがイタリアであることが大きい。
実はこの国と日本は非常によく似ている。例えば、先進国のなかで日本の高齢化率が高いことはよく知られているが、実はその次に高いのがイタリアだ。近年問題になっている労働生産性の低さに関しても、実は日本とイタリアはどっこいどっこい。また、職人気質の高さや、家族経営の小さな会社が多いなど共通点が多い。
そんな似ている国がゆえ、観光の「分散型」に行き着くプロセスも瓜二つだ。1976年、イタリア北部で大地震が発生し、住人が町を離れて空き家だらけになった地域をなんとか再生させようということで、「アルベルゴ・ディフーゾ」(分散したホテル)という取り組みが始まったことに端を発する。
地方の人ならば痛感しているだろうが、今の日本は大地震が起きてない地域でも、シャッター商店街や空き家だらけだ。大多数の日本人にとって「地域の再生」は、カジノホテルがどこの都市にできるなんて話よりもよほど深刻な問題なのだ。
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