「オフィス、もういらないかも?」 と思えるフルリモート企業の成功事例 カギは「ワイワイ・ガヤガヤ感」:ソニックガーデンに学ぶ(3/4 ページ)
新型コロナの影響で一気に広まったリモートワーク。さまざまな課題が浮き彫りになっているが、中でも「ワイワイ・ガヤガヤ感」を醸成し、どこにいても同じコミュニケーションを取れるようにすることは重要だ。では、どうすればいいのか。
「これは、制度自体は用意しているが、実際に『使える』制度になっていないことと、リモートワークを試してみた上でうまくいかなかったケースが考えられます」(八角氏)。つまりリモートワーク導入後に、環境の整備やセキュリティ、コミュニケーションに課題を抱え、生産性を向上させるところまで至れない企業が多いということだ。
そこで、カギを探るために、リモートワークで成功しているソニックガーデンの歴史を振り返ってみたという。08年ごろは、浜松町の昔ながらのオフィスビルに出社しており、服装もスーツだったと八角氏は振り返る。
その後、「ステップ1」としてコピー機やプリンタを撤廃してペーパーレス化に取り組んだ。さらに「ステップ2」では、ファイルストレージやメールサーバをクラウド化。「ステップ3」として、10年にはメールからチャットへ移行した。「メールではスピード感が出ませんでした。お客さんとやりとりするのはメールでないと難しいこともありますが、社内ではかしこまる必要もないので、チャットを導入しました」(八角氏)
その後、11年から一部リモートワークを開始し、「ステップ4」としてWeb会議の活用が始まった。きっかけは、社員の1人が、「1年間アイルランドを旅したい」と言い始めたことだった。当時のメンバーはわずか5人だったので、1人が欠けるだけでも影響が大きい。そのため、リモートワークをやってみることにした。「ずっと一緒にやって来たメンバーで信頼関係もあるので、試しにリモートワークをやってみました。これがうまくいったんです」(八角氏)
12年にはリモートでの採用を開始すると、全国から応募があった。最初の応募は兵庫県からで、採用までつながった。その後、「ステップ5」では、東京のオフィスにあるPCでSkypeの音声をつなぎっぱなしにした。東京にいる5人はオフィスに出社し、兵庫県の人と疑似的にではあるが「一緒に」仕事したのだ。
課題は「ワイワイ・ガヤガヤ感」
この取り組みはうまくいっていたそうだが、組織の拡大に伴って14年ごろにはオフィスにいる人数よりリモートワーカーの方が増えてきたため、Skypeだけでは破綻してしまったという。チャットツールをオフィス代わりにしようともしたが、うまくいかなかった。チャットだと仕事を進めることはできたが、一緒にオフィスにいる「ワイワイ・ガヤガヤ感」がなくなってしまったためだ。
そこで、仮想オフィス「Remotty」を開発することになった。翌15年には、物理的にオフィスに出社する社員より、リモートワークで「論理出社」する社員の方が多くなったという。最終的に、16年にはとうとう物理オフィスを撤廃することになる。「仮想オフィスこそが、われわれのオフィスとなりました。加えて、東京に住んでいる人はいきなりリモートワークとなっても自宅に環境がないこともあります。そこで、全国にワークプレースを設置しました」(八角氏)
18年には、入社式や納会、勉強会などリアルで行っていたイベントもオンラインにシフトしていった。こうして、全社員がリモートワークになり、社内行事もオンラインへと移行が完了した。
たった一つだけ掲げた、リモートワークの方針
ソニックガーデンではリモートワークを導入する際、ある方針を一つだけ掲げていたという。
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