デジタルで「4P」はどう変わる ウーバーイーツがけん引する、「流通」政策の今:「新時代」のマーケティング教室(2/3 ページ)
マーケティング理論として知られる「マーケティング・ミックス」(4P)。デジタル時代にどう変わっている? 東京都立大学経済経営学部の水越康介教授が解説する。
共同活性化を盛り上げるウーバーイーツと出前館
よく知られているように、ウーバーイーツでは、誰でも登録すればデリバリー業務を担うことができる。店舗側は、自前でデリバリーのスタッフを持つ必要はない。一方顧客側は、スマホ一つで好きなものを注文。電子マネーなどで支払いを済ませ、注文した自分の商品が運ばれてくる様子を追跡しながら待つことができるし、誰が運んでいるのかも分かる。このとき、店舗から顧客の元まで商品を運ぶチャネルの役割は、一般の人々によって担われている。
同様に、ウーバーイーツと競合するように最近よく見かけるのは出前館である。実際、ウーバーイーツの黒に緑の配達バッグを持った配達員もよく見かけるが、出前館の赤い色のバッグやバイクもよく見かけるようになった。出前館は、配達員を主にアルバイトやパートタイマーとして雇用するスタイルをとっている。この点では、ウーバーイーツよりも従来型の配送サービスの代行に近い。とはいえ、もともと出前館は、その名前の通り出前を仲介するWebサービスだった。店舗と顧客を結び付けるマッチングを中心にしていたわけである。
実はこのマッチングこそ、基本的で従来的な流通政策だ。流通業者は、作り手と買い手を結び付け、双方の利便性を高める。買い手は一店一店を回って商品を探さなくても、出前館のWebサイトに行けば全ての商品を一覧できる。売り手も、一人一人の顧客にアプローチせずとも、出前館にだけ出店しておけばよい。出前館は、こうした基本的な流通政策から1歩も2歩も進み、バイトやパートタイマーを活用した配送サービスを拡大していったのである。
D2Cとオムニチャネル
出前館の歴史的な展開が分かれば、同様の位置付けとして、「D2C(Direct to Consumer)」や「オムニチャネル」も捉えることができるようになるだろう。D2Cは、オンライン店舗を通じて自社製品を直接販売する仕組みであり、オムニチャネルとは、オンラインもオフラインも含めて複数のチャネルを連携させ、顧客に対してシームレスな購買体験を提供する仕組みを指す。
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