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韓国アイドル”BTS”株乱高下、芸能界の株式上場が世界的に珍しいワケ古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(3/4 ページ)

著名KPOPグループの「BTS(防弾少年団)」が所属する「ビッグヒットエンターテインメント」が10月15日、KOSDAQ(韓国証券市場)に上場した。実は、ビッグヒット社のような数千億円規模の芸能プロダクションが上場する例は世界的に見ても稀であり、日本においてもこれは例外ではない。芸能プロダクションはなんらか株式公開をしない普遍的な理由があると考えられる。それは一体なぜなのだろうか。

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上場維持にかかるコスト

 この点について、まずは上場を維持するコストについて検討してみよう。実は、「上場企業」という看板を維持するだけでも、年間で最低でも1億円以上の維持コストがかかる。ホリプロが上場していた東証一部となれば、監査法人の会計監査もさらにコストがかかるほか、個人株主を管理するための株式事務や、株主総会の運営、上場のための管理体制整備に多額の資金が必要となる。

 そもそも、企業が株式を上場する最大の目的は、株式による資金調達である。しかし、直接的に会社が市場で資金調達できる典型例は上場時の売り出しを行う場合と、上場後に第三者割当増資等を行う場合くらいだ。

 市場でいくら自社の株式が買われたとしても、売り手が個人投資家であれば代金は当然個人投資家の元に渡るため、企業が資金調達したことにはならない。確かに、売買が活発になることで株価が上昇すれば、上昇した企業価値に基づいた借入や市場からの資金調達も可能だ。しかし、増資や株式の売り出しを行う必要がないキャッシュリッチな企業は、自社の持分比率を削ってまで市場から資金調達に出る必要性は乏しいといえる。

 例えば、市場から調達する資金が年間10億円程度であるときに、3億円を上場維持にかけているとすれば、上場による資金調達のコストは金利でいえば30%を超え、とても割高な資金調達方法ということになる。「資金調達の必要性に乏しい」ことは十分な非公開化の動機となり得る。

 しかし、市場には自社の売上高規模等と比較しても多額のコストを支払ってまで上場を維持している企業の例もある。このような企業はどんな目的で上場を維持しているのだろうか。

 それは、上場企業であることが、顧客から見た会社のブランドイメージや知名度の高まり、ひいては円滑なビジネス機会の獲得といったメリットがあるからだ。

 しかし、ホリプロの声明にもあった通り、芸能事務所は所属のアーティストによる高い知名度およびブランドイメージを保持しているほか、テレビ局といった伝統的プレーヤーとの横のつながりも強いことから、ビジネス機会創出のための信用といった上場の付加価値は芸能プロダクションにとってはそこまで魅力的ではなくなる。

 芸能事務所が上場を手控える背景には、この2点がやはり大きいと考えられる。

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