「ビジネス需要は戻らない」 5100億円赤字見通しのANAホールディングス、コスト削減と新需要獲得へ:大型機を大幅削減へ(3/3 ページ)
ANAホールディングスが発表した2021年3月期の連結業績予想は、過去最大の5100億円の最終赤字となる見通しだ。危機を乗り切るための事業構造改革では、機材の削減などによる大幅なコスト削減を図る。「強靭な企業グループに生まれ変わる」ための施策を急ぐ。
第3ブランドの新LCCを立ち上げ
事業構造改革プランでは、新型コロナによる航空需要の“量”と“質”の変化を踏まえて事業を見直す「新しいビジネスモデル」も打ち出している。
航空需要はどう変化しているのか。まず、ワークスタイルの変化やWeb会議の普及により、「ビジネス需要は減少し、完全には戻らない」と予想。一方、レジャー需要には潜在的な成長力があると見ている。その上で、単なる移動にとどまらない新たな顧客ニーズも生まれると見る。
そこで、アフターコロナの新たな需要獲得に向けて、ANA、Peachに加えて第3ブランドのLCCを立ち上げる。グループのエアージャパンを母体としたブランドとなる。ビジネスを中心とした高単価需要が縮小する一方、低価格志向が強まると判断。東南アジアやオーストラリア向けの中距離路線を中心としたレジャー需要獲得を担う。国際線の需要回復傾向を判断しながら、22年度をめどに運航を開始する計画だ。
ANAがビジネス需要に対応するプレミアムエアライン、Peachが短距離中心のレジャーやビジネス需要に対応する一方で、第3ブランドでは成長が見込まれるアジアマーケットを狙う。エアージャパンを母体とすることで、速やかな事業立ち上げが可能で、急激な需要変動への対応力も保持できるという。
顧客ニーズの多様化に向けて、エアライン以外の事業による非航空収益の拡大にも取り組む。旅行事業、ANAカード事業、物販事業などを通して、グループ全体で顧客接点を増やし、生活に密着した事業を展開していく方針だ。
新型コロナによって、多くの人が「移動しない」という、事業の根幹を揺るがす危機が訪れた。国際線を中心に、まだ需要の回復は不透明だ。危機を乗り切り、新しい需要に対応するための取り組みを確実に進めていく事業運営が今、求められているようだ。
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