いまさら聞けないCBDC 日銀がPayPayの競合になる?(4/4 ページ)
世界各国で急速に動き出したCBDCだが、いったいどういうものなのかが分かりにくい。デジタル通貨といっても、銀行預金はいってみればデジタルだし、クレジットカードや電子マネーもある。CBDCとは一体何なのか。
現金対キャッシュレスが、CBDC対キャッシュレスに
現時点では、日銀はCBDCの取組方針を公表した段階だが、導入に向けて「内圧と外圧が高まっている」と中島氏は見る。欧州中央銀行もデジタルユーロのレポートを公表し、商標権も申請した。米国の中央銀行である連邦準備制度(Fed)も動き出した。
さらに、日本政府が前のめりだ。7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針」、通称「骨太方針」内ではCBDCへ言及された。これに加えて、「日銀法の改正に向けて自民党が動き出した」と中島氏。こうした動きに対応し、日銀はデジタル通貨グループを作り公表した取り組みに当たる。「グループ長には、通常の課長クラスではなく、2段階上の局長級の人を付けた。しかも企画局出身というかなり第一線の人材を充てたことで、日銀の本気度がうかがえる」(中島氏)
日銀が公表した取組方針では、CBDCに期待する機能として、次の3つを挙げている。
- 現金と並ぶ決済手段の導入
- 民間決済サービスのサポート
- デジタル社会にふさわしい決済システムの構築
しかし、「日銀は民間の決済サービスに配慮し過ぎでは?」と中島氏は言う。「現在、現金は民間のキャッシュレスサービスと競合している。これがCBDC対キャッシュレスの競合に置き換わるだけなので、あまり気にしすぎる必要はない」(同)
遅れているといわれていた日本のキャッシュレス化だが、CBDCが実現すればキャッシュレスが標準になる。中島氏は「海外の開発事例からみると、2024〜27年には導入できるのではないか」とスケジュールについて予想する。民間決済サービスや銀行なども含めて、金融の根幹が大変動するタイミングはそれほど遠くない。
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