いまさら聞けないCBDC 日銀がPayPayの競合になる?(3/4 ページ)
世界各国で急速に動き出したCBDCだが、いったいどういうものなのかが分かりにくい。デジタル通貨といっても、銀行預金はいってみればデジタルだし、クレジットカードや電子マネーもある。CBDCとは一体何なのか。
CBDCは民間決済事業者の競合になるのか?
では、CBDCが登場すると、民間の決済事業者にはどんな影響があるのだろうか。中島氏は3つのシナリオを挙げた。
1つ目は入口部分で競合が起きるシナリオだ。消費者は、電子マネーを使うのかQRコードを使うのかの選択肢が現在もあるが、そこにCBDCが加わることになる。CBDCは、店舗側からすれば手数料がかからず、利用者側からすればどんな店でも使える。一見、非常に強い競合となるように見える。
デジタル人民元を推進する中国でも、政府担当者は、アリペイとWeChatPayが広く普及したことで公的な役割を果たしていることを問題視している。これがデジタル人民元導入の動機の1つだともいわれており、民間サービスと競合になる可能性もある。
ただし、CBDCには利用を促進するような手段は採りにくい。「CDBCは、ポイントやキャンペーンなど、あまり難しいことはできない。民間のサービスはそういうことをやってユーザーを引きつけることになるだろう。競合しながら使い分けが行われるのが1つのシナリオだ」(中島氏)
2つ目は、民間の決済サービス自体がCBDCを活用するというシナリオだ。現在、PayPayなどの決済サービスは、利用者のチャージは銀行口座から行い、店舗側への支払いも銀行口座に対して行う。この銀行間入出金と送金のコストが、決済サービスの課題の1つだ(記事参照)。
ところが、銀行口座の代わりにCBDCからPayPayなどにチャージし、加盟店への支払いもCBDCで行うようになれば、手数料を削減できるだけでなく、リアルタイムに近い決済も可能になる。「表面的には民間決済だが、裏ではCBDCを使う。銀行口座の代わりにCBDC決済が行われる可能性がある」(中島氏)
3つ目は、CBDCを活用した新たな決済サービスが生まれる可能性だ。電子決済に手数料が全くかからない世界になると、マイクロペイメントと呼ばれる超少額決済が可能になる。Webページを見るたびに“1円”を投げ銭するような世界は、これまでも可能性が模索されてきたが手数料に阻まれてきた。CBDCであれば実現する可能性がある。
さらに、CBDCの裏側の技術には暗号資産を起源とするブロックチェーンが使われる可能性がある。ブロックチェーンには、スマートコントラクトと呼ばれるプログラムを自動実行させる機能を持たせることができる。技術的には、CBDCにもこの機能を取り込むことが可能だ。つまり、決済にまつわるさまざまな取り決めを、CBDC自体に盛り込んで自動的に実行させられる可能性がある。
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