JR九州の新型観光列車「36ぷらす3」の“短所を生かす”工夫 都市間移動を楽しくする仕掛けとは:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
JR九州の新型観光列車「36ぷらす3」に試乗した。観光列車先駆者である同社の新型車両は、車窓を楽しむ列車ではない。窓が小さく、景色を見せられない分、車内でのおもてなしに力を入れている。観光都市間を移動する空間を楽しくする、これまでとは違う列車だ。
観光列車ビジネスの先駆者、JR九州
JR九州にとって、「D&S(デザイン&ストーリー)列車」事業は、観光列車のブランドでもあり、JR九州自体のブランド価値も上げる施策だ。その第一弾は1989年の「ゆふいんの森」だった。大都市福岡と観光地由布院・別府を結ぶルートで、既存の観光地向け優等列車のグレードアップ版だ。翌年にJR東日本が投入した「スーパービュー踊り子」も似たコンセプトといえる。
特にビジネス戦略で見事だった施策は、九州新幹線鹿児島ルートの部分開業、全線開業に合わせた観光列車群の投入だった。九州新幹線の誘客策として、目的地として楽しめる列車を次々に投入した。この実績が日本初のハイクラスクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」につながっている。JR九州は観光列車ビジネスの先駆者として、新たに試みを成功させてきた。
「36ぷらす3」も斬新な列車だ。全行程は木曜から月曜までの5日間。通しで乗れる旅行商品を販売する旅行会社もある。しかし基本はバラ売り。従来のローカル線観光列車より高めの価格設定だ。私はこれを、普及価格の観光列車とクルーズトレインの隙間を埋める新市場の開拓と評価した(関連記事:観光列車は“ミッドレンジ価格帯”の時代に? 新登場「WEST EXPRESS 銀河」「36ぷらす3」の戦略)。
そして実際に乗車してみると、JR九州の新しいチャレンジが見えた。ハッキリ言おう。「36ぷらす3」は車窓を楽しむ列車ではない。
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